18歳人口はどこまで減少する?2040年推計と大学経営への影響
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- 大学ブランディング研究所 編集部
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2040年の18歳人口には、約88万人、約82万人、約74万人という数字が併存しています。どれか一つが単純な誤りなのではなく、資料を作った時点と出生の仮定が違います。大学経営で必要なのは、数字を一つ選んで危機を語ることではなく、推計条件を確認し、自大学の募集圏と入学行動へ引き直すことです。
2040年の18歳人口は推計の前提を確認する
文部科学省が2025年2月の参考資料で示した出生低位・死亡低位のケースでは、18歳人口は2025年1,100,314人、2030年1,051,986人、2035年964,129人、2040年739,050人です。実際の出生数が、国立社会保障・人口問題研究所による出生中位の想定を下回って推移したため、低位ケースを用いています。
| 年 | 18歳人口 | 大学進学率 | 大学入学者数 | 定員充足率 |
|---|---|---|---|---|
| 2025 | 1,100,314人 | 56.63% | 643,539人 | 101.83% |
| 2030 | 1,051,986人 | 58.20% | 632,631人 | 100.11% |
| 2035 | 964,129人 | 59.11% | 590,102人 | 93.38% |
| 2040 | 739,050人 | 59.58% | 459,757人 | 72.75% |
ただし、表の大学入学者数と定員充足率は、外国人留学生数を2025年水準で固定し、2023年度の入学定員規模が続くなどの仮定を置いた試算です。定員充足率72.75%は、全国の大学が2040年に必ず同じ率になるという予測でも、個別大学の経営結果でもありません。定員再編、進学行動、留学生政策、大学の統廃合が変われば結果は動きます。
「2040年82万人」「88万人」「74万人」が併存する理由
将来人口の資料には、2040年約88万人、約82.3万人、約73.9万人といった数字が現れます。これは単純な誤記ではなく、推計の作成時点、実績として取り込んだ出生数、出生・死亡の仮定が違うためです。2018年の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」では約88万人が前提に置かれ、2023年の参考資料では約823,382人、2025年資料の出生低位ケースでは739,050人が示されています。
大学の資料で「2040年に18歳人口は○万人」とだけ書くと、数字の違いを読者が検証できません。少なくとも、出典資料、資料の公表年、どの推計ケースか、全国値か地域値かを添えます。中期計画では一つの値を確定未来として扱わず、中位・低位など複数シナリオを置き、どの条件で定員や事業を見直すかを決めます。
人口から自大学の入学者までには五つの変換がある
18歳人口が減っても、自大学の志願者が同率で減るとは限りません。全国人口から自大学の入学者までには、次の変換があります。
- 高校卒業・大学進学:18歳人口のうち、大学進学を選ぶ割合。
- 地域間移動:居住地からどの都道府県・都市圏へ進学するか。
- 分野選択:人文、社会、理工、医療、芸術など何を学ぶか。
- 大学選択:設置区分、学費、立地、教育内容、入試方式などでどこを比較するか。
- 入学意思決定:合格後に実際に入学し、学びを継続するか。
全国平均だけでは、このどこに課題があるか分かりません。資料請求は維持されているのに出願が減る大学と、出願はあるのに入学手続率が下がる大学では、打つべき手が違います。広報の認知課題、教育内容の比較課題、価格や立地、併願構造、入試日程を分けて診断します。
募集圏は「所在県」ではなく実際の入学者移動で定義する
大学の需要予測では、所在都道府県の18歳人口だけを見るのも不十分です。地元中心の大学、隣接県から集める大学、全国から集める大学では、人口減少の影響が違います。過去数年の出身高校所在地、志願・合格・入学の地域別構成、併願校、交通時間を用いて、一次募集圏、二次募集圏、例外的な全国流入を分けます。
都道府県別の進学者数には、自県の18歳人口だけでなく、県外への流出と県外からの流入が影響します。都市部への移動が続く場合、地方大学は地域人口の減少以上の影響を受ける可能性があります。一方、特定分野や教育経験に強い大学は、所在地の人口だけでは説明できない流入を持つことがあります。その強みを確認するには、印象ではなく学科別・地域別の入学実績を見ます。
進学率と留学生数も含めて需要を読む
2025年資料の出生低位ケースは、大学進学率が2025年56.63%から2040年59.58%へ上がる前提でも、国内の大学進学者数が623,368人から440,489人へ減ると試算しています。進学率の上昇は影響を和らげますが、母数の減少をすべて相殺するとは限りません。
外国人留学生について、2033年の政府目標である留学生比率5%へ向かう増加ペースを、2023年から2040年まで延ばした別ケースでも、2040年の大学入学者数は485,099人、定員充足率は76.76%です。留学生を受け入れるには、募集経路だけでなく、日本語・英語での教育、在留・生活支援、学修支援、卒業後の進路、教職員体制が必要です。「留学生を増やす」を数字上の不足分へ当てはめるだけでは、教育の質と学生の経験を損ないます。
社会人の学び直しも同様です。18歳向け課程の時間割、入試、学費、授業方法を変えずに「社会人も対象」と掲げても、働きながら学べるとは限りません。募集対象を広げる試算には、必要になる教育・支援の費用と体制も含めます。
大学経営では市場、教育、規模、財務を一緒に見る
| 判断領域 | 確認するデータ | 決めること |
|---|---|---|
| 市場 | 地域別人口、進学率、流出入、分野需要 | 対象地域と対象者 |
| 募集 | 認知、接触、出願、合格、手続、入学 | どの段階を改善するか |
| 教育 | 履修、学修成果、継続、卒業、進路 | 提供価値と支援体制 |
| 規模 | 学部学科別充足、教員配置、施設利用 | 定員、組織、キャンパス |
| 財務 | 学生納付金、固定費、投資、複数シナリオ | 維持・再編の条件と時期 |
募集広報で改善できるのは、大学の価値が知られていない、比較時に理解されていない、出願導線で離脱している、といった領域です。地域人口と定員規模の不一致、学問分野への需要変化、教育内容と対象者の不一致まで広告量で解決しようとすると、広告費を増やしても解消しない課題が残る可能性があります。
反対に、人口減少を理由に一律に縮小すればよいとも言えません。医療、教員養成、地域産業など、社会的に必要な人材育成は、市場規模だけで判断できません。大学の公共的役割、教育の質、地域でのアクセス、財務持続性を同時に扱う必要があります。
実務では三つのシナリオを同じ表で比較する
将来計画では、基準、厳しい、構造転換の三つを置くと判断条件が見えます。基準シナリオでは現在の募集圏と進学率が緩やかに変化する場合、厳しいシナリオでは出生低位や地域流出が強まる場合、構造転換では定員再編、対象年齢の拡張、教育提供方法の変更を行う場合を試算します。
各シナリオについて、学科別入学者、歩留まり、学生納付金、必要教員数、施設、学修成果を同じ形式で比較します。そして「充足率が何%になったら検討する」だけでなく、「何年連続」「どの学科」「教育の質にどんな兆候が出たら」という判断条件を置きます。毎年、出生実績、学校基本調査、自大学の入試・教学データで更新します。
広報担当者が人口データを使うときの注意
人口減少を強く訴えるだけの発信は、危機感を共有できても、大学を選ぶ理由にはなりません。受験生にとって重要なのは、人口減少の中で大学が何を守り、何を変え、自分がどんな教育を受けられるかです。中期計画や学部再編を説明するときは、背景データ、判断、教育上の意味、移行措置を分けます。
また、「生き残る大学」「消える大学」のような断定は、個別大学の財務、教育、政策支援、再編可能性を見ずに判断できません。全国の定員充足率推計から特定大学の存続を予測することもできません。データは不安を煽る道具ではなく、選択肢と条件を比較するために使います。
全国推計を個別大学の未来予測には使わない
言えるのは、2025年の資料が用いた出生実績と仮定の下では、2030年代に18歳人口と国内の大学進学者数が大きく減る試算となり、現在の全国定員規模をそのまま維持することには強い圧力がかかることです。また、進学率や留学生の増加だけでは、試算上すべてを埋められません。
ただし、特定大学の志願者数、定員充足率、統廃合時期までは判断できません。大学ごとの募集圏、分野、価格、選抜、教育成果、政策、競合行動が異なるからです。将来推計は結論ではなく、意思決定の前提を更新する材料です。自大学データと組み合わせ、仮定が外れたときの修正手順まで用意します。
