大学ブランディングとは「らしさ」で選ばれること

コラム

大学ブランディング講座 第1回 基本編 らしさで選ばれること

本連載は、ブランドコンサルタントの上條憲二先生による「大学ブランディング講座」(全10回)をコラムとして再構成したものです。第1回の締めくくりとなる今回は、「大学ブランディングとは何か」という問いに答えていきます。

結論を先に述べます。大学ブランディングとは、「らしさ」によってステークホルダー(高校生、在学生、保護者、教員、職員など)から選ばれる存在になることです。そしてその前提には、「ブランドは経営そのものである」という考え方があります。

ブランドは「経営そのもの」

ブランドは、ロゴや単なるデザイン、広告のことではありません。上條先生は、ブランドを「経営そのもの」だと言い切ります。この違いを表すのが、「ブランドをマネジメントする」と「ブランドでマネジメントする」という二つの言葉です。

  • ブランドをマネジメントする:主としてコミュニケーションの手段としてブランドを扱う段階(=ブランドコミュニケーション)
  • ブランドでマネジメントする:ブランド戦略を、事業戦略を実現していくためのドライバーとして位置づける段階(=ブランド経営)

前者では、事業戦略の脇にブランド戦略があり、あくまで伝え方の一手段にとどまります。後者では、事業戦略とブランド戦略が一体となり、IR、カスタマーサポート、セールス、マーケティング、人事・採用、製造、研究開発といったあらゆる活動を、ブランドが束ねていきます。事業戦略とブランド戦略は一体である、というのがこの講座の立場です。

整理すると、「ブランド=頭の中の確固たる存在/確たる評判」であり、「ブランディング=事業活動によりブランドをつくること」です。

ブランドは「両想い」から育つ

ブランドは、自社が一方的に発信して成立するものではありません。自社とステークホルダーのに成立するものです。

自社側には、価値観・志・約束があります。一方、ステークホルダー側には、価値観・欲求・期待があります。この二つが響き合うところに、ブランドが生まれます。上條先生はこれを「ブランドは『両想い』から育まれる」と表現します。

大学に置き換えると、自校の価値観・建学の精神・志・約束と、学生や教職員、保護者、高校生、地域社会、企業といったステークホルダーの価値観・欲求・期待とが重なり合う。その重なりが、その大学ならではのブランドになります。

「らしさ」とは何か

とはいえ、「ブランド」という言葉は解釈が分かれ、どこか曖昧に感じられるものです。そこで上條先生は、あえて「らしさ」と言い換えてみることを提案します。自分らしさ、日本らしさ、アップルらしさ、コカ・コーラらしさ、そして「〇〇大学らしさ」。固有の価値をもつ「らしさ」こそが、ブランドである、という捉え方です。

では、固有の価値をもつ「らしさ」とは何か。講座では、次の三つが挙げられています。

  • その組織に「意志がある」
  • 社会と顧客(ステークホルダー)のニーズを満たしている
  • 他との違いがある

大学で言えば、「大学としての意志」「社会(ステークホルダー)のニーズ」「他大学との違い」。この三つが重なるところに、その大学固有の価値、すなわち「らしさ」が立ち上がります。確たる評判=固有の価値=らしさ→ブランド、という流れです。

「らしさ」は大学活動のすべてに及ぶ

ここで重要なのは、「らしさ」が広報物やロゴといった“見え方”だけの話ではない、ということです。「らしさ」は大学活動のすべてに及びます。

  • 授業・学生活動・学生支援:らしい授業(講義・ゼミ・プロジェクト)、キャリア支援
  • 組織:学園の精神・建学理念、理事長・学長・教員・職員の「志」「誇り」「モチベーション」
  • 社会貢献:地域連携、企業連携
  • 見え方:ロゴマーク、スローガン、ステートメント、パンフレット、広報、施設・設備、イベント、オープンキャンパス

強いブランドでは、こうした一つひとつの活動を貫く「約束(ブランドコンセプト)」が明快で、それが教職員を通じて各接点に反映され、ステークホルダーの頭の中に評判として積み上がっていきます。逆に弱いブランドでは、「約束」そのものが曖昧なため、活動がバラバラになり、せっかくコストをかけても部分最適に終わってしまいます。

「らしさ」で選ばれる存在になる

大学ブランディングとは、ブランドコンセプト(「らしさ」の源)に基づいて、カリキュラム、授業、入試、広報、学生支援、地域連携といったすべての活動に一貫性を持たせることです。「らしいカリキュラム」「らしい授業」「らしい広報」「らしい学生支援」——こうした一貫性の積み重ねが、「らしさ」によって選ばれる大学をつくります。

なお、ブランドの効果は、選ばれること(Choice)だけにとどまりません。価格競争の回避(Premium)や志望者の固定化(Loyalty)に加え、人材を引きつけ(Attract)、引き留め(Retain)、意欲を高める(Motivate)という、組織内部への効果も持ちます。ブランドは「長期的な利益」の源泉なのです。

第1回では、「ブランドとは何か」という基本を確認してきました。次回以降は、実際に大学でブランディングを進めていくための、具体的なステップに入っていきます。