コラム

3つのポリシーとは?全国825大学調査で見えた「一体で読める」305/476校

執筆
大学ブランディング研究所 編集部
監修
上條 憲二
最終確認
個性を示す制度が、同じ言葉に収束した — 全国476大学の3つのポリシー全数調査

3つのポリシーとは、卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)、教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)、入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)の3つで、学校教育法施行規則により全大学に策定・公表が義務づけられています。当研究所が全国825大学の公式サイトを収集し、ポリシーページの本文を取得できた476校を調べたところ、「社会」を使う大学が85.3%、「専門」69.5%、「知識」66.4%でした。理念語彙データは取得ページの品質を再判定しているため、両データを直接比較していません。3つのポリシーは大学の個性を示すために制度化されましたが、本文を取得できた476校の集計では似た言葉に収束しています。

知りたい方針から読む

3つのポリシーとは、どういう制度か

大学が「どんな学生を受け入れ、どう教育し、何ができるようになったら卒業させるか」を、一貫した方針として公表する仕組みです。

ポリシー 正式名称 定めるもの
ディプロマ・ポリシー(DP) 卒業認定・学位授与に関する方針 卒業時に身につけているべき資質・能力
カリキュラム・ポリシー(CP) 教育課程の編成及び実施に関する方針 DPの達成に向けた教育課程の編成・実施方法
アドミッション・ポリシー(AP) 入学者の受入れに関する方針 DP・CPを踏まえ、どのような学生を受け入れるか

重要なのは順序です。文部科学省は、3つのポリシーを「一貫性のあるもの」として策定するよう求めており、起点はDP(何ができる人を送り出すか)にあります。DPが決まってCPが決まり、CPを踏まえてAPが決まるという設計です。 [出典: 「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン|文部科学省

なお策定・公表は任意ではありません。学校教育法施行規則により、全大学に義務づけられています。

3つのポリシーの公開実態

全国825大学を機械収集した結果

当研究所は2026年8月、文部科学省「学校コード一覧」に基づく全国825大学の公式サイトから、ポリシーページを機械収集しました。トップページから1階層以内でポリシーページに到達でき、本文を取得できたのは476校です。

3つのポリシーを同一ページで確認できた大学は、到達条件を満たした476校中305校(64.1%)。設置区分別は国立48.9%、公立63.9%、私立66.0%
出典:大学ブランディング研究所「大学3つのポリシー公開ページ調査」。分母はHTTP 200・本文あり・抽出本文400字超の476校。2026年8月14日確認。
指標 校数 割合
3つのポリシーを1ページに統合掲載 305校 64.1%
ディプロマ・ポリシーへの言及 339校 71.2%
カリキュラム・ポリシーへの言及 321校 67.4%
アドミッション・ポリシーへの言及 341校 71.6%

(いずれも本文を取得できた476校を分母とする)

設置区分で差が出る

3つを1ページにまとめて出しているかどうかは、設置区分で分かれました。

設置区分 到達校 統合掲載 割合
私立 368校 243校 66.0%
公立 61校 39校 63.9%
国立 47校 23校 48.9%

私立がもっとも高く、国立がもっとも低い。理念への直リンクの調査でも同じ傾向(私立60.1%・公立48.0%・国立44.7%)が出ており、学生募集の競争環境が厳しい私立ほど、方針を1枚にまとめて見せる設計をとっているという分布が観察されます。ただし本調査が示すのは分布の事実までで、因果ではありません。 [出典: 当研究所 全数調査 2026

ポリシーで使われる言葉

頻出語トップ20

順位 校数 割合
1 社会 406 85.3%
2 専門 331 69.5%
3 知識 316 66.4%
4 貢献 310 65.1%
5 人間 293 61.6%
6 国際 288 60.5%
7 実践 283 59.5%
8 課題 279 58.6%
9 多様 278 58.4%
10 コミュニケーション 273 57.4%
11 解決 262 55.0%
12 教養 260 54.6%
13 主体 254 53.4%
14 思考 242 50.8%
15 技術 240 50.4%
16 技能 234 49.2%
17 表現 234 49.2%
18 協働 230 48.3%
19 創造 219 46.0%
20 判断 218 45.8%

社会に貢献する、専門的な知識を持った人間を育てる」。この骨格が、全国の大学のポリシーに共有されています。

頻出語だけでは、大学の違いを説明できない

到達条件を満たした476校では、「社会」が406校(85.3%)、「専門」が331校(69.5%)、「知識」が316校(66.4%)で確認されました。「社会に貢献する専門的な知識を持つ人材」という骨格は、多くのポリシーページに共通しています。

ただし、この集計は取得ページ全文に語が一度でも現れたかを数えたものです。同じ「社会」でも、地域医療、産業技術、教員養成、国際協働では意味が違います。出現率が高いことは、その語を大学が重視していることや、ポリシーの内容が同一であることを証明しません。

また、理念ページ調査との直接比較は行いません。取得対象、ページ判定、本文抽出の条件が異なるデータを並べると、文章の違いではなく収集条件の違いを読んでしまうからです。本記事で比較するのは、同じ取得条件で集計した476校内の設置区分、方針名、語彙に限ります。

語彙表の使い道は、大学の優劣を決めることではなく、自校の説明が共通語だけで止まっていないかを確かめることです。頻出語を使う場合も、誰が、どの場面で、何をできる状態を指すのか、授業や評価方法までたどれる形にします。

ポリシーで個性を示す方法

当研究所は各大学の公開情報を同じ物差しで観察し、ブランディングの構造を型として分類しています。ポリシーに関して、実際に機能している構造は2つ観察できました。

第一に、理念の言葉をポリシーに貫通させる。 東京電機大学は、ディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーの両方に「実学尊重を旨として」「『技術は人なり』の精神のもと」という自校固有の言葉を明記しています。要件語(知識・技能・倫理性)は満たしつつ、その前に自校の一文を置く。これなら制度要件と固有性が両立します。

第二に、測れる語に翻訳する。 関西大学は学是から「考動力」という語を派生させ、自律力・人間力・社会力・国際力・革新力の5要素に分解して測定する仕組みを作りました。ポリシーの抽象語を、そのまま抽象語で終わらせない構造です。

共通しているのは、要件語を削るのではなく、その手前に自校の語を1つ置くという手です。

明日から着手できる3つのこと

  1. 自校のDPを開き、上の頻出語トップ10と何語重なるか数える。 5語以上重なるなら、それは制度要件を満たしている証拠であると同時に、そこだけでは他大学と区別がつかないという意味でもあります
  2. DPの冒頭1文に、自校固有の語が入っているか確認する。 入っていなければ、建学の精神・教育理念から1語だけ持ち込めないかを検討する。要件語を削る必要はありません
  3. DP→CP→APの順で書かれているか確認する。 文部科学省のガイドラインが求める起点はDPです。APから逆算して書かれた文書は、募集の言葉に引きずられて一貫性を失いやすくなります

数字を読むときの三つの注意

  1. 64.1%の分母は476校です。 全国825校の64.1%ではありません。HTTP 200、本文あり、抽出本文400字超の条件を満たした476校のうち305校です。
  2. 未到達は未掲載を意味しません。 本調査の探索範囲でページへ到達できなかった大学について、3つのポリシーが存在しないとは判定していません。
  3. 「一体で読める」は質の評価ではありません。 同一取得本文でDP・CP・APの三つの表記を確認した状態です。内容の一貫性や教育成果までは判定していません。

調査データをダウンロード

集計結果を再確認できるよう、学校別判定、集計JSON、列定義、訂正履歴、利用条件を公開します。学校別CSVには取得本文を収録しません。大学名、学校コード、設置区分、都道府県、取得元URLを識別情報として収録し、各方針の判定、本文長、事前定義語彙の一致を判定結果として収録しています。

公開版はv1.0.1です。2026年8月17日、CSV生成器の列参照誤りを修正し、空欄だった476校の取得元URLをクロール原本から復元しました。大学名欠損0件、取得元URL欠損0件、学校コード重複0件を確認しています。

この調査について

  • 対象: 全国の大学825校(文部科学省「学校コード一覧」令和8年5月1日時点・暫定版(2026年5月29日公表)の現存校)
  • 方法: 各大学公式サイトの機械収集。トップページから3ポリシーページへのリンクを探し、見つからない場合は「大学案内」等を1階層のみ辿って再探索。robots.txt を尊重し、アクセス間隔1.2秒、User-Agentに連絡先を明示
  • 結果: ページ取得 518校(うち本文400字以上の476校を集計対象)/リンク未発見 243校/robots.txtにより対象外 26校/接続エラー 38校
  • 時期: 2026年8月14日
  • 調査主体: 株式会社ブログル(大学ブランディング研究所)/監修: 上條憲二(愛知東邦大学 教授/日本ブランド経営学会 会長)

限界の明示: (1) 語彙統計は事前定義リストの出現有無によるもので、文脈(肯定・否定・引用)は判定していません。(2) ポリシーページの判定はリンクテキストとURLのキーワード一致によるため、サイト構造によっては取りこぼしがあります。「リンク未発見243校」は、その大学がポリシーを公表していないという意味ではありません。 公表義務がある以上、多くはサイトの下層にあり、本調査の探索範囲(1階層)で到達できなかっただけです。(3) 語「情報」は「情報公開」等のナビゲーション由来の可能性があるため、頻出語の集計から除外しました。

記載内容に誤りがある場合は、速やかに訂正いたします。編集方針もあわせてご覧ください。

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