関西大学は「学の実化」をどう「考動力」へ翻訳したか
- 執筆
- 大学ブランディング研究所 編集部
- 監修
- 上條 憲二
- 最終確認
関西大学の学是は、1922年に提唱された「学の実化」です。同大学はこの古い言葉を変更せず、長期ビジョンの策定時に理念へ立ち返って今日的に解釈し、「考動力」「革新力」という人材像へ展開しました。
さらに「考動力」を五つの要素へ分解し、教学IRで学生が自己点検できる仕組みを設けています。理念から現代語を作り、測定可能な能力へ落とす過程を検証します。
判定要旨
学是、長期ビジョン、派生語の定義、五要素、教学IR、施策名までの接続を公式情報で確認できます。一方、測定値が教育改善や社会的評判へどの程度つながったかは、今回の記事では確認していません。
調べた資料と、公開情報の限界
理念、大学史、Kandai Vision 150、中期行動計画、教学IR、SDGsの取り組み、入学式での発信を読みました。学是「学の実化」を起点に、「考動力」という能力語を定義し、学生自身が振り返る仕組みまで整えていることが分かります。
ただし、個々の学生の変化や、学内外での言葉の受け止め方までは公開資料から判断できません。内部会議資料、個票データ、関係者への取材、外部認知調査は今回の対象外です。
学是「学の実化」は、学理と実際の調和を求める
関西大学は「学の実化」を、大学が実社会の知識と経験を教育研究へ取り入れ、社会が大学の研究成果を取り入れるという「学理と実際との調和」と説明しています。1922年の大学昇格時に、総理事・山岡順太郎氏が提唱しました。[理念|関西大学]
大学はこの学是を、進む方向を示す羅針盤であり、今後も変わらないものと位置づけています。原文を保存する意思は確認できますが、学生・教職員が日常的にどう理解しているかは、理念ページだけでは分かりません。
長期ビジョンは、理念の「今日的な解釈」から始めた
Kandai Vision 150の策定について、大学は、20年後の大学を担う若手教職員と担当副学長が中心となり、建学の精神と学是に立ち返って今日的に解釈し、育成人材像と将来像を考えたと説明しています。[Kandai Vision 150|関西大学]
新しい言葉を先に作って理念へ接着したのではなく、理念の再解釈を出発点として明記しています。その結果、教育分野の政策目標には「考動力」「革新力」を育成する教育の深化が置かれました。[政策目標・中期行動計画|関西大学]
「考動力」は五つの要素へ分解される
関西大学は「考動力」を、自ら考え、自律的かつ積極的に行動する力と定義しています。教学IRでは、これを次の五要素に分けています。[考動力を伸ばすプログラム|関西大学]
- 自律力
- 人間力
- 社会力
- 国際力
- 革新力
学生はコンピテンシー診断を通じて自己を振り返り、過去の結果と比較できると説明されています。抽象的な派生語を、学生が確認できる評価項目へ落としている点が分析上の核です。
ただし、自己評価の結果が能力そのものを完全に測るとは限りません。測定尺度の妥当性、回答率、教育改善への利用状況は今回未検証です。
派生語は複数の接点で使われる
「考動力」は教学IRだけでなく、関西大学のSDGs活動「私たちは考動する」や入学式の発信にも現れます。2026年度入学式の記事では、学内外の経験と「考動力」が発見や出会いにつながると説明されています。[関西大学×SDGs/2026年度入学式]
学是、ビジョン、教育目標、測定、社会貢献、式辞で同じ派生語が使われています。一方、全ての部局や教育課程で同じ意味に運用されているかは、個別確認が必要です。
「計測語型」という読み方
当研究所は、関西大学を「計測語型」と分類します。歴史的な理念を保存し、今日的な派生語を定義・分解して、教育と測定の共通語にする型です。
判定条件は三つです。
- 原典となる理念と派生語の関係を大学自身が説明している。
- 派生語に定義と構成要素がある。
- 構成要素を確認する測定・振り返りの仕組みがある。
関西大学は公開情報上、この三条件を満たすため確信度を「高」としました。ただし、測定結果による教育成果や認知効果まで確認した判定ではありません。
別の説明と、次に必要な検証
「考動力」が多くの場所に現れるのは、理念の浸透ではなく、統一された広報用語を展開した結果とも説明できます。また、自己診断があることと、学生の能力が向上したことは別です。
次に必要なのは、次の検証です。
- コンピテンシー診断の尺度設計と妥当性
- 学年別・参加別の変化
- 結果が授業・支援の改善に使われた事例
- 教職員が「学の実化」と「考動力」の関係を説明できるか
- 学生、卒業生、社会の認知
他大学が持ち帰れる設計
古い理念を、そのまま学生向けコピーへ置く必要はありません。原文を保存しながら、現在の教育で扱える能力語へ翻訳できます。
- 理念の中核となる判断や行動を抽出する。
- 現代の学生が理解できる派生語を定義する。
- 派生語を複数の能力へ分解する。
- 授業、支援、振り返りで使う。
- 測定結果を教育改善へ戻す。
新語を作るだけでは不十分です。原典との関係、定義、分解、利用、改善までつながって初めて運用になります。
証拠台帳
| ID | 区分 | 主張 | 根拠 | 確認日 |
|---|---|---|---|---|
| KU-01 | 確認事実 | 学是「学の実化」を学理と実際の調和と説明 | 理念 | 2026-08-16 |
| KU-02 | 確認事実 | ビジョン策定を理念の今日的解釈から開始 | Kandai Vision 150 | 2026-08-16 |
| KU-03 | 確認事実 | 「考動力」「革新力」の育成を政策目標に置く | 政策目標 | 2026-08-16 |
| KU-04 | 確認事実 | 「考動力」を五要素へ分解し、診断を実施 | 教学IR | 2026-08-16 |
| KU-05 | 確認事実 | 「考動」をSDGs活動や入学式発信に使用 | SDGs/入学式 | 2026-08-16 |
| KU-06 | 編集部の解釈 | 学是から派生語、測定、施策へ共通語を通している | KU-01〜KU-05 | 複数接点から判断 |
| KU-07 | 未確認 | コンピテンシー診断が能力向上を実証している | 尺度・結果未検証 | 未確認 |
| KU-08 | 未確認 | 「考動力」が学外の評判として定着している | 認知調査なし | 未確認 |
調査の限界と更新方針
- 本記事は2026年8月16日時点の公開情報に基づき、関西大学への取材は行っていません。
- 「計測語型」は当研究所の分析分類であり、大学自身が用いる名称ではありません。
- 教学IRの尺度、回答率、結果、教育改善への利用状況は確認していません。
- 学内浸透、認知、出願、社会的評判への効果は測定していません。
- 公開情報の追加や事実誤認が確認された場合は、内容と更新日を記録して訂正します。
記載内容へのご指摘は、編集方針・訂正窓口からお寄せください。
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更新履歴
- 2026-08-14: 初版公開
- 2026-08-16: V3へ全面改稿。FAQと未検証の断定を削除し、6軸、測定の限界、反対説明、証拠台帳、更新履歴を追加
