ブランドとは何か —「頭の中の確たる評判」と“らしさ”

コラム

大学ブランディング講座 第1回 基本編 ブランドとは何か

本連載は、ブランドコンサルタントの上條憲二先生による「大学ブランディング講座」(全10回)をコラムとして再構成したものです。今回のテーマは、講座の核心である「ブランドとは何か」です。

先に結論を述べます。ブランドとは、「頭の中の確たる評判」であり「頭の中の確固たる存在」です。工場や店で作られるものではなく、人の頭の中に作られるものだ、という考え方が出発点になります。

ブランドは「頭の中」に存在する

たとえば、こんな連想を思い浮かべてみてください。

  • BMWと言えば……高級な外車、ベンツと違ってドライビングが楽しそう
  • コカ・コーラと言えば……アメリカっぽい、赤いパッケージ、ハッピー
  • ディズニーと言えば……楽しそう、ミッキーマウス、魔法
  • 大谷(翔平)と言えば……メジャーリーガー、二刀流、ホームラン

これらはすべて、私たちの頭の中に存在するイメージです。そして、そのイメージが具体的な行動を促します。上條先生はこれを、「製品は工場に、商品はお店に、ブランドは『頭の中』に存在する」と表現します。

ここで大事な補足があります。ブランドとは「エルメス」「ルイヴィトン」のような高級品のことではありません。広告やマークのことでもありません。ブランドは「頭の中にあるイメージの貯金箱」であり、ロゴマークはその貯金箱を開ける“カギ”にすぎない、というのがこの講座の捉え方です。

ブランドは「機能」と「情緒」の融合から生まれる

では、その頭の中の評判は、何によって形づくられるのでしょうか。上條先生は、人は「機能」と「情緒」(その融合)によって判断すると説明します。

「価格が安い」「ちょっとした機能がついている」といった機能的価値は、目に見えやすく、比較しやすい一方で、他社に真似されやすいという特徴があります。これに対し、「使い心地が良い」「品質イメージが良い」「好きである」といった情緒的価値は、目に見えにくいものの、独自性が強い。そして人は、好きになるほどそのブランドへの愛着(ブランドロイヤルティ)が高まっていきます。

言い換えれば、ブランドとは「機能的価値」ではなく「情緒的価値」、「物」ではなく「物語」、「最良」ではなく「最愛」です。人は「モノ」そのものではなく、そのモノが持つイメージや歴史、評判といった「物語」に魅せられる、というわけです。

ブランドの起源は「識別するための記号」

「ブランド(Brand)」という言葉の語源は、古代ノルド語の“brandr”で、「焼きつける」を意味します(英語の“burn”=「焼く」の語源にあたります)。もともとは、他人の家畜と識別するために所有者の名前を焼印したもの、つまり識別するための記号でした。

その記号に、やがて品質や評判といった「見えない価値」が込められていきます。たとえば、「村上宗隆」という選手名(識別記号)が、活躍を重ねるうちに「村神様」という愛称(ブランド)へと変わっていく。最初は単なるネーミングだったものが、事業活動や消費活動を通じて“ひいき”され、ブランドへと育っていくのです。

アーカーが説く「ブランドは企業戦略を左右する資産」

ブランド論の代表的な論者に、デービッド・アーカーがいます。その著書『ブランド・エクイティ戦略』『ブランド論』(ダイヤモンド社)では、ブランドを「企業戦略を左右する資産」と位置づけ、ブランド価値を構成する要素として次の点を挙げています。

  • ブランド認知:そのブランドを知っているか
  • 知覚品質:顧客が購買目的に応じて対象に感じている品質
  • ブランド連想:ブランドから派生する連想。顧客との関係性を強化する
  • ブランド・ロイヤルティ:ブランド価値の中核。ブランドに対する愛着、忠誠心。一度獲得すると失われにくい

また、ブランドコンサルティングファームのインターブランドは、ブランドを“Living Business asset”=「常に変化するビジネスアセット(資産)」と定義しています。ブランドはあらゆる企業活動を通して生み出され、適切にマネジメントされれば、識別性・差別性・価値を生み出すという考え方です。

ここまでをまとめると、ブランドとは「頭の中の確たる評判」であり、企業にとっての資産です。そして、その評判の正体を一言で言い換えるなら、「らしさ」です。次回は、この「らしさ」をキーワードに、大学ブランディングとは何かを考えます。