上智大学は、全学の3つのポリシーをどう一つの学修像に束ねたか
- 執筆
- 大学ブランディング研究所 編集部
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上智大学は、全学部・全研究科の「3つのポリシー」を改訂し、2027年度から順次適用する予定です。外国語学部は2028年度以降が予定されています。ニュースを読んだとき、編集部はまず「全学部・全研究科」という規模に目が向きました。学部・学科、研究科・専攻ごとに違う教育を、大学全体で見直す仕事です。
ただ、改訂内容を追うと、大学が目指しているのは方針を同じ文面にそろえることではありませんでした。学部と大学院で、それぞれ異なる三つの能力の柱を定め、その柱に沿って各組織が専門分野で身に付ける成果を整理する。学部教育と大学院教育の違いを残し、それぞれの専門分野で育てる力を説明しようとしています。

三つのポリシーは、学生の時間を別々に切り取る
上智大学が公表した改訂の説明によれば、アドミッション・ポリシーは入学者に求める資質・能力、カリキュラム・ポリシーは教育課程の編成・実施、ディプロマ・ポリシーは卒業・修了時に身に付けるべき力を示します。入学前、学んでいる途中、卒業・修了の時点を、それぞれ別の方針で扱う仕組みです。制度の基本を先に確かめたい場合は、3つのポリシーを全体から読む記事も参照してください。
三つを並べると、大学案内の用語説明に見えるかもしれません。けれど、ディプロマ・ポリシーで示す学修成果が、カリキュラム・ポリシーの科目や順序へつながり、アドミッション・ポリシーで迎える学生像とも離れないことを示せなければ、学生には自分の学びの道筋が見えにくくなります。
改訂の告知は、学生がどのような力を培い、それをどの教育課程や学修経験で育むのかを、これまで以上に明確に示すことを目的に挙げています。編集部が読み直したのは、この「力」と「育む場」を、どの単位で結び直しているのかでした。
学部と大学院、それぞれの柱から専門ごとの言葉へ移す
改訂発表は、能力の柱を大学と大学院に分けて示しています。大学共通の三つは、次のとおりです。
- 人間の尊厳を重んじ、より良き社会を追究していくために必要な力
- 多様な人々と向き合い、対話・協働していくために必要な力
- 叡智を探求し続け、創造的役割を果たしていくために必要な力
大学院共通の三つは、「専門家としての資質・研究倫理」「高度な専門的知識」「社会を先導する力」です。学部と大学院に同じ三つの文言を当てはめているわけではありません。各学部・学科、研究科・専攻は、それぞれに対応する柱に沿って、専門分野で学生が身に付ける学修成果を整理しています。
改訂後の詳しい記述は、2027年度から適用予定の大学・大学院の3つのポリシー(PDF)で確認できます。個別の専門分野を読む場合は、学部・学科のポリシー(PDF)と研究科・専攻のポリシー(PDF)へ進めます。外国語学部の新しいポリシーは2027年度以降に公開予定です。
ここで共通の柱は、専門別の説明を消すための見出しではありません。上智大学の説明は、全学的な教育方針と各組織の専門的な学びとの関係を明確にする、としています。全学の言葉をそのまま各組織へ配るのでなく、専門性の異なる場でどう読めるかを考える前提にしています。
改訂発表は、建学の理念と教育目標を踏まえて全学の方針を整理し、各学部・学科、研究科・専攻の方針を見直したと説明しています。大学共通の柱には「人間の尊厳」や「対話・協働」、大学院共通の柱には「研究倫理」や「高度な専門的知識」が置かれています。編集部は、同じ教育理念を背景にしながら、学部教育と大学院教育で求める力を書き分けた点に注目しました。理念との関係を読む際も、課程ごとの違いを残して確かめられます。
全学の一貫性を先に求めると、学部・研究科の固有性が薄くなるように思われがちです。逆に、組織ごとの説明だけを厚くすると、大学全体で何を約束するのかが散らばります。上智大学の公開資料は、学部と大学院それぞれの共通の柱を起点に、各組織が具体化する順序を示していました。
カリキュラムの前に、到達点との関係を読めるようにする
改訂説明では、カリキュラム・ポリシーについて、全学的なカリキュラム見直しに先立ち、授業科目の順序性や体系性、学修方法、学修成果の評価方法の考え方を分かりやすく示すとしています。カリキュラムそのものの変更だけを先に知らせるのではなく、何の力へ向かう設計なのかを先にたどれるようにする考え方です。
また、現行の全学の3つのポリシーは、学部・学科と研究科・専攻ごとの方針へ進む入口を分けて置いています。学部と大学院で扱う学びを一枚に均すのではなく、共通の方針から、別々の教育研究上の目的と方針へ進む構成です。
上智大学は、外国語学部については2028年度以降の適用予定と注記しています。改訂内容も今後一部変更となる可能性がある、とされています。公開資料から言えるのは、2027年度以降の適用に向けて方針を整理していることまでです。学生が実際に学びの道筋をどう受け取るか、改訂後の教育がどのような成果につながるかは、この段階では判断できません。
方針を見直すときは、課程と適用年度をそろえて読む
学長室、教学、IR、経営企画、広報が全学のポリシーを見直すときは、まず学部と大学院を分け、同じ適用年度の共通方針と個別方針をそろえます。そのうえで、卒業・修了時に何を身に付けるのか、その力へ至る教育課程や学修経験がどう置かれるのか、入学者に何を求めるのかをたどります。上智大学の資料を参照する場合も、現行の方針と2027年度以降の改訂版を取り違えないことが出発点になります。
学部・学科ごとの改訂版を開いたら、卒業までに何を身に付けるのか、それをどの科目や学修経験で育てるのかを読んでみます。大学院なら、研究倫理や専門知識、社会を先導する力が、どの研究・教育活動に対応しているかを確かめます。上智大学の改訂から持ち帰りたいのは、大学共通の言葉だけで説明を終えず、それぞれの課程で学生が何を学ぶかまでたどれるようにすることです。
訂正:大学と大学院の能力の柱を共通のものと読める記述を改め、それぞれの内容と改訂版資料へのリンクを追記しました。外国語学部の適用時期も冒頭に明記しました。
