コラム

建学の精神は誰の言葉か|私立373校を調べて分かったこと

執筆
大学ブランディング研究所 編集部
最終更新日
建学の精神の言葉と出所を示す記事バナー

理念の短い言葉を読んで、その出所まで知りたくなることがあります。誰の発言なのか、いつの文書なのか、それとも後年に整えられた表現なのか。大学ブランディング研究所は、確認できた理念ページの本文から、創立者をどう紹介しているかを調べました。

対象を2026年8月24日時点の463大学に固定すると、私立373校のうち91校で「創立者」「創設者」「創始者」「建学の祖」のいずれかを確認しました。これは歴史を持つ大学の数ではなく、指定した語が確認した本文にあった大学の数です。

91校という数字が数えているもの

設置区分 対象校数 創立者への言及
私立 373校 91校(24.4%)
公立 51校 0校
国立 39校 0校

人物名だけが書かれている場合や、別の沿革ページで創立の経緯を説明している場合は、この集計には入りません。公立51校と国立39校で該当語がなかったことも、創設に関わった人物や物語が存在しないという意味ではありません。設置区分だけで、その大学の歴史を判断することはできません。

人名の先に、言葉の由来がある

東京慈恵会医科大学の建学の精神は、「病気を診ずして病人を診よ」を、創設者の高木兼寛が目指した医師の養成像とともに説明しています。短い言葉だけを載せる場合と比べ、何を大切にしようとした表現なのかが読み取れます。

名古屋経済大学の説明では「一に人物、二に伎倆」の出所が市邨芳樹の著書『やぶつばき』に示されています。出所が分かると、読者は言葉を一般的な標語として受け取るだけでなく、元の文書へ戻って意味を調べられます。名古屋経済大学の教育理念

設立の事情から伝える例もあります。川村学園女子大学の説明は、関東大震災後の復興と女性の力を結び付けた川村文子の考えを紹介しています。人物の略歴を足すだけでなく、その学校を必要とした背景が分かる書き方です。

編集部がこれらの記述から持ち帰りたいのは、人名を一律に追加する方法ではありません。引用の出所を示すのか、設立の事情を説明するのか。残っている資料に応じて、読み手が言葉の意味を確かめる経路をつくることです。

三方針の名前があることと、教育のつながりは分ける

同じ私立373校について、創立者への言及と、三つの方針名を同じ抽出本文で確認できたかを並べました。

私立大学 校数 三方針名を同じ抽出本文で確認
創立者に言及している 91校 46校(50.5%)
言及していない 282校 137校(48.6%)

該当割合は50.5%と48.6%で、差は1.9ポイントでした。ただし、この比較で数えたのは、抽出した本文に三つの方針名があるかどうかです。方針の全文がそろい、一体で読めるかを判定した数ではありません。教育課程が理念に沿っているか、授業で実行されているかは調べていません。この差から「創立者の紹介と教育制度は関係がない」と結論づけることもできません。

方針名が出てきたら、その先にどの学部・課程の方針本文があるかを確かめます。名前の検出と、方針同士の関係を読めることは、別の問いとして調べる必要があります。

由来を確かめてから、説明を見直す

自校の理念を更新するときは、いま使っている一文について、原文、成立時期、後年の説明を並べてみます。言葉の由来を確認できれば、引用として残す部分と、現在の読者へ説明を補う部分を区別しやすくなります。

創立者が一人に定まらない歴史もあります。その場合は、誰か一人を選ぶより、設立の目的や受け継いだ経緯を資料に沿って説明できます。今回確認していないページについて「書いていない理由」を推測する必要はありません。まず、残っている資料から何が言えるかを確かめる。それが理念の説明を直す、具体的な一歩になります。

2026年9月16日追記:旧稿にあった、設置区分から創立者の物語の有無を推定する記述と、三方針名の検出を本文の統合掲載や教育制度の実行状況へ広げた解釈を訂正しました。集計対象と数値は変更していません。