大学別分析

北海道科学大学の改組案内は、在学生に何を約束したか

執筆
大学ブランディング研究所 編集部
最終更新日
北海道科学大学の改組案内は、在学生に何を約束したか

北海道科学大学の人間社会学科ページには、「人間社会学科の学びは、地域創造学科に受け継がれます」とあります。編集部も最初は、この「受け継ぐ」という言葉が改組の要点だと考えました。現在の3専攻を、新しい地域創造学部へどうつなぐのか。その説明を追うつもりでした。

ところが、2026年5月の改組構想発表へ戻ると、もっと切実な一文がありました。在学生(2026年度入学生を含む)について、学科名称と学位は変わらず、学修、卒業、資格取得、進路にも影響はない。人間社会学科として卒業までの教育課程を保証する――という記載です。「受け継ぐ」が新学部への橋を架ける言葉なら、こちらは、いま学んでいる学生の足元を動かさないための言葉です。

広報と教学の担当者が、在学生へ維持する六つの資料と次年度入学生向け案内を分け、中央で原資料と照合する編集イラスト

「影響はない」の後ろに、六つの対象が並ぶ

大学が公表した改組構想は、人間社会学科の2027年度以降の学生募集停止を知らせたうえで、在学生への扱いを具体的に書いています。対象は、学科名称、学位、学修、卒業、資格取得、進路です。

この並び方には意味があります。学科名が残ると伝えるだけでは、授業や資格まで同じかは分かりません。卒業できると伝えるだけでは、どの学科名・学位で卒業するのかが残ります。大学は、在学生が改組の知らせを読んだときに生まれそうな問いを、一語の「継続」へ丸めず、学生生活の単位へほどいています。

公式ページの配置順では、新学部の説明が先です。それでも編集部がこの在学生向けの段落で立ち止まったのは、改組広報の信用が、華やかな新設情報だけでなく、現在の学生に何を約束するかでも決まるからです。

新入生には「新しい学び」、在学生には「変えない範囲」

地域創造学部地域創造学科は文部科学大臣の認可を受け、2027年4月開設、入学定員75人、学士(地域創造学)と公表されています。新学部の特設ページでは、地域へ出て人の声を聞き、価値を見つける学びや、手稲駅前キャンパスでの展開が紹介されています。これは2027年度以降の入学生へ向けた説明です。

一方、現在の人間社会学科ページは、3専攻の学びを掲載しながら、2027年4月の改組と新学部への継承を案内しています。同じ改組を扱っていても、新入生には「何を学べるようになるか」を示し、在学生には「自分の教育課程のどこが変わらないか」を示す。二つの説明は、似ているようで役割が逆です。

名称と学びの関係は、神戸女子大学の一学科二専攻を読んだ記事でも扱いました。ただし今回の焦点は、名称の下で専門性を分けることではありません。同じ改組について、入学年度の違う学生へ異なる約束をすることです。

「学び続ける力」を掲げる前に、学び続けられる条件を守る

北海道科学大学は建学の精神で、「科学的市民」を、豊かな人間性と基盤能力、専門性を併せ持ち、専門職として主体的に役割を果たせる人材と説明しています。さらに+Professional教育とHUSスタンダードの案内では、全学で育てる基盤能力の一つに「自らを律し、学び続ける力」を置いています。

もちろん、在学生への保証文が、この力を育てたという成果を証明するわけではありません。ただ、学生に学び続ける力を求めるなら、大学側には、入学時に始まった教育課程を続けられる条件を明確にする仕事があります。改組の途中でも、学科名称、学位、学修、卒業、資格取得、進路を曖昧にしない。新学部の目的だけを語るよりも、大学が誰の学びに責任を持つのかが見えます。

改組ページを公開した後、三つの画面を並べて読む

大学広報と入試広報は、受験生向け特設ページだけで改組の発信を完結させず、教学部門とともに、構想発表、現行学科ページ、新学部ページを同じ机に並べる必要があります。そこで確かめたいのは、対象年度ごとに「変わるもの」「変わらないもの」「まだ確認が必要なもの」へ迷わず到達できるかです。

公開情報から確認できるのは、大学が在学生への保証を書き、新学部の認可後情報を出し、現行学科と新学部のページをそれぞれ公開しているところまでです。在学生が実際にどう受け止めたか、保証どおりの運用が円滑に進んでいるかは、この情報だけでは判断できません。

改組の知らせには、未来を語るページと、現在を守るページの両方が要ります。北海道科学大学の事例で最も重いのは、新学部の説明を増やしたことだけではありません。いま学んでいる学生について、何を変えないのかを六つの対象まで書き切ったことです。