コラム

大学の中期目標とは?中期計画との違いとKPI設計を解説

執筆
大学ブランディング研究所 編集部
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中期計画を動く指標へ変える推移図

国立大学法人の中期目標は、6年間に法人が達成すべき業務運営上の目標です。中期計画は、その目標を実現する措置と達成水準、評価指標を示します。第4期は2022年度から2027年度までです。計画書を作って終わる制度ではなく、4年目終了時と6年目終了時の評価へつながる経営の約束です。

中期目標、中期計画、年次実行を分けて読む

決めること 確認する資料 注意点
中期目標 6年間で何を実現するか 文部科学大臣が定めた中期目標 方向性だけでなく対象と成果を読む
中期計画 目標へ向けた措置、達成水準、評価指標 認可済み中期計画と変更履歴 当初版ではなく対象時点の最新版を使う
年次の実行 今年の担当、事業、予算、期限 学内計画、会議資料、予算資料 中期計画との対応番号を切らさない
自己点検・評価 進捗、原因、修正 自己点検報告、実績データ 活動量と成果を分ける
法人評価 中期目標の達成状況 4年目・6年目終了時評価 評価方法と対象範囲を確認する

同じ「中期計画」という名称でも、私立大学・学校法人、公立大学法人、国立大学法人では根拠制度が異なります。国立大学法人の第4期が6年だからといって、すべての大学の計画期間や評価方法が同じとは言えません。検索結果を比較するときは、設置者、根拠法令、対象組織、期間、認可・評価主体を最初に確認します。

第4期で年度評価がなくなった意味

文部科学省の国立大学法人評価委員会資料によると、第4期は法人評価委員会が行う毎年度の年度評価を廃止し、4年目終了時評価と6年目終了時評価を行う制度へ変わりました。外部から毎年評定されないことは、毎年の確認が不要になったことを意味しません。むしろ、自律的な改善を前提に、各法人が進捗を点検する責任が増しています。

4年目終了時評価では、各中期計画の進捗を踏まえて中期目標の達成へ向けた状況が判断されます。文部科学省の手引は、すべての中期計画が一定以上の評定であるか、計画以上の成果があるかなどを判断の目安として示しています。ただし、機械的な点数だけでなく、取組実績や法人の事情を含めて総合判断することも明記しています。

評価指標に必要なのは数値化より検証可能性

第4期の制度設計を検討した2020年の項目案では、中期計画に6年間で達成を目指す水準や方策、検証可能な指標を記載する方向が示されました。現在の評価実務では、文部科学省の実施要領と手引に基づき、中期計画ごとの実績と達成水準を確認します。指標は定量でも定性でもかまいません。重要なのは、第三者が根拠を追え、目標との関係を説明できることです。

指標の書き方 弱点 検証できる形への修正
国際化を推進する 達成状態が不明 対象、実施内容、到達状態、確認資料を定める
留学生数を増やす 基準値、分母、時点がない 課程・在籍区分・基準日・基準値・目標値を付ける
連携事業を10件実施する 活動量だけで成果が不明 利用者、教育研究上の変化、継続条件も追う
外部評価を受ける 受けた事実しか測れない 指摘、意思決定、実施、結果確認まで記録する
新制度を構築する 存在と機能が混同される 利用状況と、どの判断・成果へ使われたかを示す

指標には、基準値、対象、算出式、データ責任者、確認時期、目標達成時期を添えます。結果が最終年度にしか出ない場合は、制度設計、参加、利用、行動変化など、途中で軌道修正できる先行情報を置きます。ただし、先行指標が最終成果を保証するわけではありません。

京都大学の公開資料から年次管理の実物を読む

京都大学は、第4期中期目標・中期計画の当初版と変更経過を公開し、各施策の取組状況をまとめた自己点検・評価報告書を毎年度公表しています。2024年度の報告書では、評価指標ごとに基準値、年度実績、達成時期、担当理事・担当課、取組、成果、次年度の課題と実行計画を対応させています。

この構造の重要点は、達成率のグラフだけではありません。たとえば経営協議会の学外委員比率という定量指標に対して、委員構成の達成だけでなく、事前に意見を聴いて議論時間を確保したことや、その意見を自己点検・評価の概要版・様式改善へ反映したことまで記録されています。「人数を満たした」ことと「外部意見を大学運営へ生かした」ことを分けているため、制度の存在から機能へ踏み込めます。

ただし、これは京都大学の自己点検方法の例です。他法人が同じ様式を採用すべきだとは言えません。自大学の目標、意思決定、規模に応じて、管理に必要な粒度を選ぶ必要があります。

四つのIDを一つの台帳で結ぶ

中期目標ID、中期計画ID、評価指標ID、年度事業IDを一つの台帳で対応づける階層図

中期計画と日常業務の間で起きやすい断絶の一つが、計画書の表現と各部署の事業名が対応していないことです。実務上の整理として、次の項目を一つの台帳で結びます。

  1. 中期目標ID:何を実現する目標か。
  2. 中期計画ID:どの措置と達成水準を約束したか。
  3. 評価指標ID:何を根拠に進捗を判断するか。
  4. 年度事業ID:誰が、いつ、どの予算で実行するか。
  5. 証拠:データ、会議決定、成果物、対象者の反応をどこに保存するか。
  6. 判断履歴:継続、修正、中止を誰が決めたか。

一つの事業が複数目標へ関係する場合もあります。すべての事業をすべての目標へひも付けると、主に何を達成する事業なのかが分かりにくくなります。主たる寄与先と補助的な寄与先を分け、成果を二重計上しないようにします。

未達を隠すより原因を分ける

計画は未来についての仮説を含みます。未達には少なくとも、実行が不足した、想定した因果が働かなかった、外部環境が変わった、指標が目的を測れていなかった、という異なる原因があります。それぞれ対処が違います。

観察された状態 まず確認すること 判断例
活動も成果も未達 予算、人員、権限、期限 実行条件の修正または中止
活動達成・成果未達 施策と成果の因果仮説 方法変更、対象変更
成果達成・活動未達 別要因、測定誤差 指標や施策の再設計
数値は達成・目的は不明 分母、質、利用実態 補助指標と定性検証を追加

広報は計画文をステークホルダーの問いへ翻訳する

「地域の中核」「世界水準」「学際融合」といった計画上の言葉を、そのままニュースや大学案内へ移しても、対象者は何が変わるか判断できません。学生には履修・支援・学修機会、研究者には研究環境・連携、地域には課題解決とアクセス、納税者には投入資源と成果というように、同じ計画を問い別に翻訳します。

その際、目標、活動、途中成果、最終成果を混ぜません。「センターを設置した」は活動または体制整備です。「共同研究が増えた」は途中成果かもしれません。「地域課題が改善した」まで言うには、比較方法や外部要因の検討が要ります。大学ブランディングは、計画書と別に約束を作る仕事ではなく、大学が選んだ優先順位と実際の進捗を理解できる言葉へ変える仕事です。

版管理をしない引用は誤りになる

中期計画は期間中に変更認可される場合があります。文部科学省の法人別一覧や京都大学の公開ページには変更履歴があります。比較記事や広報資料では、大学サイトに残った当初版だけを参照せず、対象日、認可日、版を記録します。統合や組織再編があれば、法人名や計画自体が変わることもあります。

変更時には、新旧対照表だけでなく、変更理由、影響する指標、過年度実績をどう扱うかも判断記録へ残します。目標値を下げた場合に達成率だけを連続表示すると、実態より改善したように見えるためです。

確認に追加の資料が必要なこと

中期目標・中期計画と自己点検報告書を読んでも、学内でどの選択肢が比較されたか、予算配分をどの程度変えたか、未達の原因についてどのような反対意見があったかまでは通常分かりません。指標達成と教育研究上の効果の因果も、公開資料だけでは判断できない場合があります。

法人の自己評価と国立大学法人評価委員会の確定評価は別の資料です。評価結果を引用する際は、公表日と評価主体を確認します。

出典