高大接続とは?高大連携との違いと、大学側の5つの実践
- 執筆
- 大学ブランディング研究所 編集部
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高大接続は、高校で育てる力、大学が選抜で確かめる力、入学後に伸ばす力をつなぎ、その結果を次の改善へ生かす取り組みです。出前授業や入試方式の変更も、このつながりの中で設計します。
高大接続とは、高校・選抜・大学教育をつなぐこと
文部科学省は高大接続改革を、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜を通じて「学力の3要素」を育成・評価する一体的な改革と説明しています。学力の3要素は、知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度です。
したがって、接続点は入学試験の日だけではありません。高校でどんな学習経験を持った生徒を求めるのか、選抜でどの能力をどの方法と比重で確かめるのか、入学後にどの教育課程と支援で成長させるのか、卒業時の学修成果までを扱います。三つのポリシーでは、入学者受入れの方針(AP)、教育課程編成・実施の方針(CP)、卒業認定・学位授与の方針(DP)を一体として運用することが求められます。
高大連携は高大接続を実現する手段
| 比較 | 高大接続 | 高大連携 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 高校教育、選抜、大学教育のつながりを設計する考え方 | 高校と大学が協力して行う具体的な活動 |
| 対象 | AP、選抜方法、入学前・初年次教育、CP、DP、検証 | 出前授業、探究支援、大学授業の受講、教員交流 |
| 責任 | 入試、教学、IR、学生支援など大学全体 | 個別のセンター、学部、担当者でも実施可能 |
| 成果 | 学びと評価の連続性、選抜と教育の改善 | 参加、体験、相互理解、個別事業の学習成果 |
連携事業が多くても、その経験が何を育て、選抜や入学後の教育とどう関係するか不明なら、高大接続としては弱い設計です。反対に、小規模な探究プログラムでも、育てる力、評価方法、入学後の学び、結果の検証がつながっていれば、接続の意味を持ちます。
APを選抜方法へ落とすには評価対応表が要る
高大接続システム改革会議の報告は、APで求める能力や水準を具体化し、どの評価方法をどの程度の比重で用いるか示す必要を挙げています。実務では、APの各項目を行に、試験、調査書、活動報告書、小論文、面接などを列にした対応表を作ります。
そのうえで、各方法が何をどこまで測れるかを検討します。面接は志望理由や考え方を深掘りできますが、短時間の応答を長期的な主体性そのものと同一視できません。活動報告書は経験を知る材料になりますが、学校や家庭による機会差、記述支援の差があります。筆記試験は一定条件で比較しやすい一方、協働や継続的な探究の過程を直接は見にくい。複数方法を使う理由と限界を評価者間で共有します。
評価基準は、抽象語を並べるだけでなく、観察できる行動や記述にします。評価者訓練、サンプル答案を使ったすり合わせ、評価のばらつきの確認も必要です。選抜の公平性を保つため、連携事業への参加経験だけを有利に扱わないこと、参加機会が限られる地域や学校への配慮も検討します。
大学側の実践は五つの仕事に分ける
高大接続を担当者個人の連携活動で終わらせないため、大学側の仕事を次の五つに分けます。これは事業を五本に増やすという意味ではなく、責任と成果物を明確にするための整理です。
- 方針を翻訳する:APの抽象語を、高校での学習経験、期待する到達水準、入学後の学びへ翻訳し、学部ごとに説明できるようにします。
- 選抜を設計する:能力と評価方法の対応表、ルーブリック、評価者訓練、受験機会の公平性を整えます。
- 学びの接点をつくる:探究支援や模擬授業を、大学紹介ではなく学問の問いと評価に触れる経験として組みます。
- 移行を支える:合格後から初年次までを連続させ、基礎支援、発展学習、相談先を学生ごとに選べるようにします。
- 追跡して戻す:入学後の学修状況を分析し、AP、選抜方法、連携事業、初年次教育のどこを変更するか決めます。
五つは、入試部門だけでは完結しません。教学、IR、学生支援、高校連携、広報が同じ目的と用語を共有し、誰が最終判断するかを定めます。広報は参加を集めるだけでなく、大学での学びと選抜条件を誤解なく伝え、参加者の声を教学へ返す役割を担います。
福井大学の実践:探究の評価を入学後まで追う
福井大学の高大接続事業の記録では、平成25〜27年度(2013〜2015年度)の調査研究で、高校教員、教育委員会、教育研究所と協力し、「問題発見力」「自己表現力」「実行力」のルーブリックを開発しました。実験・実習、発表資料作成、成果発表という複数場面で評価し、参加者へ実践証明書を発行しました。総合評価結果と入試成績、入学後の学業成績を追跡し、開発したルーブリックの評価との関連が認められたと報告しています。
福井大学の説明では、探究を評価した後にも、入試と入学後のデータを照らし合わせています。開催後に何を確かめるかまで、事業の中へ含めた例として読めます。この記録は2013〜2015年度の研究に関するものです。同じページに続く2016〜2021年度の別事業や、その参加人数とは分けて読みます。一つの大学の関連が、他大学やすべての入試方式で同じように成立するとは言えません。実装例から仕組みを学び、自大学のAPと学生集団で検証します。
鹿児島大学の実践:入試区分と入学後成績を改善材料にする
鹿児島大学の中等・高等教育接続センターは、入試形態別の入試成績と入学後成績、GPAなどの経年変化を調べ、各学部・学科と選抜機能を検証・改善する材料にしています。目的外となる学部・学科間の比較は行わないことも明示しています。
追跡調査では、入試区分ごとの平均GPAだけで優劣を決めないことが重要です。履修分野、授業評価、退学・休学、支援利用、卒業時の成果など複数の情報を見ます。相関があっても、入試方式が成績を生んだとは限りません。入学前の学習環境、経済状況、大学での支援などの要因が重なるからです。データは選抜方式を正当化するためでなく、改善すべき問いを見つけるために使います。
オープンキャンパスを教育接続へ変える
オープンキャンパスは、キャンパスの雰囲気を伝える募集イベントとしても実施できます。高大接続の接点として設計するなら、学問の問いに触れ、高校までの学びと大学での学びの違いを理解し、自分の適合を判断できる体験にします。
- 模擬授業の前に、扱う問いと高校での学習との関係を示します。
- 授業後に、何を考え直したかを短い記述で振り返ります。
- 学生の成功談だけでなく、授業の難しさ、支援、学修時間も伝えます。
- 大学が求める力を、入試広報の標語ではなく、課題例と評価観点で示します。
- 参加者の進路選択と、入学した場合の初年次経験を、可能な範囲で追います。
ここで広報の役割は、魅力を最大化することではなく、大学での学びを誤解なく経験できる接点をつくることです。参加後に志望度が下がっても、本人が自分に合わないと理解して進路を選べたなら、接続としては意味があります。参加人数や出願率だけをKPIにすると、この適合判断を失敗として扱ってしまいます。
入学前教育と初年次教育を補習だけにしない
入学前教育は、合格者の学力不足を埋める教材配信だけではありません。大学で求められる文献の読み方、問いの立て方、レポート、協働、研究倫理など、学び方の転換を支える役割があります。初年次教育では、入学時の多様な到達度を把握し、必要な基礎支援と発展課題へつなぎます。
全員に同じ課題を課すだけでは、必要な支援が異なる学生へ対応できません。一方、入試区分ごとに学生を固定的に能力分類するのも危険です。診断結果は支援を選ぶ材料として使い、授業中の学修状況や本人の希望に応じて更新します。入学前教育の受講率だけでなく、課題の達成、入学後の学修行動、支援利用を確認します。
KPIは参加から改善まで段階を分ける
| 段階 | 確認すること | 指標例 |
|---|---|---|
| 参加機会 | 対象となる高校生へ公平に届いたか | 地域、学校種、参加経路 |
| 学習 | 問い、探究、自己理解に変化があったか | 成果物、振り返り、ルーブリック |
| 選抜 | APと評価方法が対応したか | 評価者間一致、方法別データ |
| 移行 | 大学での学びへ円滑に移れたか | 入学前課題、初年次履修、支援利用 |
| 継続 | 学修成果がどう推移したか | 単位、学修行動、継続、卒業 |
| 改善 | 結果を制度へ戻したか | AP、選抜、授業を変更した理由と内容 |
数値を集める前に、誰がデータを持ち、どの目的で結合し、個人情報をどう扱うかを決めます。入試、教学、学生支援のデータを接続する場合、利用目的、アクセス権、保存期間、個人を識別しない集計方法が必要です。結果を高校へ返すときも、個人や学校を不当に序列化しない形で共有します。
接続の成果は、進路選択と入学後の学びで確かめる
高大接続の考え方から言えるのは、AP、選抜、入学前・初年次教育、CP、DPを別々に運用するより、育てる力と評価を対応づけ、入学後の結果から改善する必要があることです。連携事業も、目的と評価を明示すれば、学びの接続を支える場になります。
ただし、特定の入試方式がすべての学生に優れているとは判断できません。GPAだけで大学での成長全体を測ることもできず、高校での探究経験と入学後成果の関連から因果を断定することもできません。大学ごとにAP、分野、学生集団、支援体制が異なります。制度名や事業数を競うのではなく、何を育て、何で確かめ、どの結果をどう改善へ戻したかを公開します。
