私立大学の定員割れは53.2% — 数字の裏側にある「選ばれる理由」の問題
- 執筆
- 大学ブランディング研究所 編集部
- 監修
- 上條 憲二
- 最終確認

令和7年度、私立大学の入学定員充足率は101.61%と3年ぶりに100%を超え、定員割れ(充足率100%未満)の大学は316校・53.2%へ改善しました。ただしこの改善は、18歳人口が前年度比2.7万人増という一時的な回復と、22年ぶりの入学定員減少によるものです。令和9年度には18歳人口が再び減少に転じる見通しが示されており、構造は変わっていません。数の調整で稼げる時間には限りがあり、残るのは「なぜこの大学が選ばれるのか」を説明できるかどうかです。
令和7年度の定員割れの実態
一次データで見る4つの指標
日本私立学校振興・共済事業団「令和7(2025)年度 私立大学・短期大学等 入学志願動向」(集計対象:私立大学594校)の数値です。
| 指標 | 令和7年度 | 令和6年度 | 差 |
|---|---|---|---|
| 入学定員充足率 | 101.61% | 98.19% | +3.42ポイント |
| 充足率100%未満の学校数 | 316校 | 354校 | △38校 |
| 未充足校の割合 | 53.2% | 59.2% | △6.0ポイント |
| 入学者数 | 510,839人 | — | +16,107人 |
[出典: 令和7(2025)年度 私立大学・短期大学等 入学志願動向|日本私立学校振興・共済事業団]
同報告書は、定員割れの定義を「認可されている入学定員に対して1名でも満たなければ未充足校」としています。また「未充足であることが、直ちに経営状況が悪化していることを示すものではないことには留意が必要である」と明記している点も、読み違えないよう押さえておくべきです。
改善後も楽観できない理由
回復の要因が、大学の努力の外側にあるからです。
同報告書は令和7年度について、18歳人口が前年度に比べ2.7万人増加した一方、令和9年度には再び減少に転じる見通しが示されていると記しています。加えて、充足率の改善には22年ぶりとなる入学定員の減少。つまり、分母を小さくした効果も含まれます。
つまり今年の数字は、①一時的な人口の増加と②定員の縮小、という2つの要因で説明できてしまいます。選ばれる力が上がったから充足した、とは言えない。 そして人口要因は令和9年度に反転します。
数の調整後に残る課題
定員を減らせば充足率は上がります。ただし定員は無限には減らせません。減らせば収入も減ります。規模の調整で時間を稼いでいる間に、「なぜこの大学が選ばれるのか」を説明できる状態を作れるかどうかが、次の減少期の分かれ目になります。
ここで問題になるのが、その説明が「他大学と同じ言葉」で書かれていないか、という点です。
理念語彙の全国集計は再検証中です
調査データの再検証中です。2026年8月の機械収集データに、理念以外のページが含まれる可能性を確認したため、語彙の比較値を一時的に取り下げています。大学ごとの公式出典と引用は引き続き確認できます。再判定後、母数・判定条件・更新履歴を公開します。
選ばれる大学が実行していること
当研究所は各大学の公開情報を同じ物差しで観察し、ブランディングの構造を型として分類しています。共通するのは、言葉の独自性ではなく「言葉の証明のしかた」で差がついていることです。
- 証拠で証明する — 「実学教育」という語自体は多くの大学が掲げますが、32年かけたクロマグロ完全養殖という証拠は他にありません(近畿大学)
- 翻訳して届ける — 理念は教職員向けの言葉のまま保存し、受験生には「熱中時間」という別の言葉で伝える(福井工業大学)
- 逆風下で言い切る — 女子大の共学化が続く局面で、理念の再解釈を根拠に「女子教育を堅持する」と理事長名で宣言する(椙山女学園)
- 実装層を積む — 1965年の建学綱領を一字も変えず、その下に測れる目標・行動規範・施設を積む(金沢工業大学)
構造の一覧は型カタログにまとめています。
明日から着手できる3つのこと
- 自校の理念を1文で書き、上の頻出語トップ5と何語重なるか数える。 3語以上重なるなら、磨くべきは言葉ではなく、それを証明するものです
- その理念を証明するものを1つ挙げる。 特定の研究、地域との長い関係、20年続けている取り組み——多くの大学にはすでに証拠があり、理念と結びつけられていないだけ、というケースが少なくありません
- 自校のトップページから理念に1クリックで届くか確認する。 届かないなら、施策の前にまず導線です
よくある質問
Q. 私立大学の定員割れは何校ですか? 令和7(2025)年度は316校で、集計対象594校の53.2%です。前年度の354校・59.2%から改善しました(出典)。
Q. 定員割れの定義は? 認可されている(または届出を行っている)入学定員に対する入学者数の割合が100%未満のことです。定員に対して1名でも満たなければ未充足校として集計されます。
Q. 定員割れ=経営が悪化しているということですか? 私学事業団の報告書は「未充足であることが、直ちに経営状況が悪化していることを示すものではないことには留意が必要である」と明記しています。
Q. 令和7年度に改善したのはなぜですか? 同報告書によれば、18歳人口が前年度比2.7万人増加したこと、および22年ぶりの入学定員減少が要因です。ただし令和9年度には18歳人口が再び減少に転じる見通しが示されています。
この記事のデータについて
- 定員充足率データ: 日本私立学校振興・共済事業団「令和7(2025)年度 私立大学・短期大学等 入学志願動向」(PDF)。集計学校数:大学594校
- 理念の語彙データ: 当研究所「大学ブランディング公開情報 全数調査 2026」。全国825大学の公式サイトを機械収集、到達796校(96.5%)、理念候補ページ611件は品質再判定中。語彙集計は一時取り下げ。2026年8月実施。監修: 上條憲二(愛知東邦大学 教授/日本ブランド経営学会 会長)
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充足率は結果、原因は手前にある: 定員が埋まるかどうかは最後に出る数字で、動かせるのは理念・裏づけ・体制の側です。大学ブランディング診断(7問・約3分)は、その3つを7つの問いで見ます。
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