大学別分析

新潟大学が災害医療で教える、支援を「実施できる」ようにする仕事

執筆
大学ブランディング研究所 編集部
最終更新日
新潟大学が災害医療で教える、支援を「実施できる」ようにする仕事

災害の現場で、何をすべきか分かっていても、それを実施できるとは限りません。人が足りない、物資が届かない、通信がつながらない。新潟大学の2026年10月生の災害医療ロジスティクス専門家コース募集案内は、必要な活動を可能にする後方支援や業務調整を、学びの中心に置いています。

必要な支援を知っていることと、その支援を実施できることの間には、何があるのでしょうか。災害医療ロジスティクス専門家コースが育てるのは、災害時の医療チームの活動と、それを可能にする後方支援や業務調整を担う人です。科目をたどると、人を支えるために、専門を持つ人どうしが何を共有する必要があるかが見えてきます。

数値資料を電卓とともに確認する手元

命を守る活動にも、生活を支える条件が要る

募集案内は、東日本大震災や熊本地震の経験から、第一線の活動を支える人員や物資の供給体制の重要性が認識されてきたと説明しています。そのうえで、専門職ごとの事情と組織間の連携を理解し、急性期から復興期まで対応できる人を養成するとしています。輸送や通信が科目に入るのは、こうした実施体制を学ぶためです。

将来ビジョン2030は、ライフを生命、生活、人生、それらを支える環境まで含むものと説明しています。これらが相互に関わる課題に、分野を越えて知を集めることを大学の役割として置いています。「幅広い分野がある」という組織の説明から、分野を分けたままでは扱えない課題の説明へ進んでいるのです。

災害医療ロジスティクス専門家コースの共通科目には、人的資源や関係機関、物的資源や輸送、情報管理や通信に関する後方支援・業務調整が並びます。医療の各専門職や行政職種など、担当の違う人が一緒に活動するための知識です。

専門領域には、心のケアや口腔ケア、看護・保健などがあります。口腔ケアの資材を扱う後方支援、避難所・福祉避難所を開設するための後方支援も科目に入っています。診療する人がいるだけでは資材は届かず、避難して暮らす場も整いません。専門的な活動を可能にする条件まで学ぶところに、生命と生活を一緒に捉える視点が見えます。

大学ブランディング研究所 編集部がこの科目構成から読むのは、専門を越えて知を集める際にも、誰が何を担うかは残るということです。共通科目では、異なる担当が調整に使う知識を学びます。専門領域では、そのうえで自分の担当する活動を支える方法へ進みます。生命と生活を一緒に考えることが、全員で同じ専門を持つことを意味するわけではありません。

分野を集めた後に、どう協働するか

大学の災害対応社会創成プロジェクトは、災害・復興科学研究所と医学部災害医療教育センターを中核に始まりました。2022年9月の説明は、防災・減災の研究と、医療や人材育成の経験を持ち寄り、理工学、社会科学、災害医療の活動を共有するとしています。

現在の未来ビジョン実現本部の紹介でも、未来社会共創ラボが災害医療分野を中心に、研究を社会で生かすことと人材育成を進めてきたと説明しています。全学の将来像に関わる組織の仕事としても、専門を越えた知の活用が位置づけられています。

こうした組織の活動と並行して、専門家コースは、災害時に業務調整を担う人へ学ぶ機会を設けています。2026年10月生の募集案内は、履修期間を原則2年間とし、オンライン学習を含む座学に実技や講習会、セミナーを組み合わせています。医療や行政の仕事を持つ人が、共通の知識と実践の両方を学ぶ組み立てです。

輸送、通信、活動する場所が整って初めて、専門職が持つ知識を支援に使えます。このコースが教えるのは、医療そのものに加え、それを実施するための条件を整える仕事です。大学の理念・目標は、専門知識を修得し、時代の課題に対応する人材の育成を教育の目標としています。災害医療のこのコースでは、専門知識の対象に後方支援と業務調整を置き、活動を実施できるようにする人を育てます。生命と生活を含む「ライフ」の広さも、ここでは、違う専門が一つの支援を成り立たせるために何を学ぶかという問いとして考えられます。