コラム

大学ブランディング戦略の作り方|経営課題から実装まで7段階で整理

執筆
大学ブランディング研究所 編集部
最終更新日
大学ブランディング戦略の作り方|経営課題から実装まで7段階で整理

来年度は、広告を増やすのか。Webサイトを作り直すのか。それとも、伝える内容を決める前に、教育や支援の仕組みを見直す必要があるのか。大学ブランディング戦略を作るとき、最初に分けたいのはこの判断です。

志願者数が減ったという一つの結果から、発信不足とは決められません。大学の存在を知られていない場合と、教育内容は理解されているが学費や通学条件で選択肢から外れる場合では、必要な仕事が違います。広報施策の候補を並べる前に、どこで、誰の判断が止まっているのかを調べます。

1.経営課題を、確かめられる問いにする

「ブランド力を上げる」だけでは、年度末に何を見て判断するかが決まりません。まず、中期計画や事業計画にある課題を一つ選びます。そのうえで、入試結果、相談記録、在学生調査などを読み、今ある説明で確かめられる範囲を絞ります。

募集が課題なら、認知、出願、合格後の入学手続きのどこで変化が起きているか。教育の特徴が伝わっていないと考えるなら、その判断は何を根拠にしたものか。担当者の感触は調査の出発点になりますが、それだけで原因を確定しません。数字の変化と、原因についての仮説を別々に書いておきます。

2.今回は、誰のどの判断を支えるか

大学の相手は受験生だけではありません。在学生、保護者、卒業生、企業、地域にも、それぞれ異なる関心があります。すべての相手を一つの施策で動かそうとすると、説明が広く薄くなります。今回の課題について、相手が何を決めようとしているかまで定めます。

受験生であっても、大学名を知る段階と、入学後の学びを具体的に比べる段階では必要な情報が違います。後者に大学の知名度だけを繰り返し伝えても、迷っている理由は残ります。相談記録を読む際には、質問された言葉と、質問の背景にある条件を分けて残すと、次に調べることが見えてきます。

3.大学として、何を約束するか

約束は、目立つ言葉を先に作ると大きくなりがちです。自校が育てたい力や大切にする教育観から、どの学びや支援を相手へ説明するかを選びます。その際には、提供できる条件まで一緒に扱います。

大学ブランディング研究所 編集部が国際教養大学の留学案内を読むと、見出しの「1年間の留学義務」に続いて、専門科目の履修、卒業単位への認定、授業料の相互免除が説明されています。同じページには、一部の大学は授業料免除の対象外であること、住居費や渡航費などは学生負担であることも記されています。

最初は留学期間が特徴に見えます。条件まで読むと、受験生に伝えるべきことは「海外に1年行く」から、何を学び、どの費用を負担し、卒業へどうつなぐかに変わります。特徴の見出しと、選択に必要な条件は、一緒に用意する必要があるのです。

4.その約束を、何が支えているか

自校の強みとして挙げる制度について、要項、授業計画、支援案内、実施記録をたどります。対象学部、参加条件、定員、費用、実施年度を確認し、紹介したい学生の経験が、どの範囲まで提供されているかを確かめます。個人の体験談はその人の経験を伝える資料です。全員に同じ経験を保証する根拠には広げません。

国際教養大学の同じ案内には、成績や提携大学の事情によって希望する大学へ留学できない場合がある、という条件もあります。「留学が必須」と「希望する留学先を選べる」は別の約束です。この区別を自校の原稿でも確かめると、制度名が実在するかだけを点検していたときには見つからなかった説明のずれに気づけます。

根拠を調べた結果、約束する範囲を狭めることもあります。限定条件を隠すより、対象者に届く説明へ直す。そのうえで、本当に対象を広げたいなら制度の検討へ戻します。原稿の修正と制度の拡充は、必要な権限も予算も異なります。

この段階で理念の一文を付け足すだけでは、大学らしさの説明にはなりません。なぜその学びを重視するのか、その考えが授業や支援のどの選択に表れているのかまでたどります。文部科学省の教学マネジメント指針の案内も、各大学が自らの理念と実情に合う仕組みを構築することを前提にしています。本稿の七段階は同指針の手順ではなく、教育の実態と対外説明をつなぐための編集部の提案です。

5.広報で変えることと、制度として決めることを分ける

説明順や導線の問題なら、広報が原稿・ページ・案内方法を修正できます。利用条件や定員を変更するなら、教学や支援部門、予算と権限を持つ責任者の判断が必要です。まだ決まっていない制度を、広報の言葉で確約してしまわないようにします。

実行計画には、制作物名だけでなく、誰が何を決めれば次へ進めるかを書きます。「Webページ更新」なら、条件の確認者、原稿の担当、公開判断をする人、更新日です。制度が未確定なら、その箇所を未定のまま制作へ渡さず、決定に必要な資料と決定予定日を先に置きます。

部署間で意見が割れる場合も、言葉の好みなのか、提供できる内容への見解の違いなのかを分けて議論します。後者をコピーの修正だけで片づけると、公開後の問い合わせ対応へ問題を持ち越します。

6.変えた仕事に対応する指標を選ぶ

説明を直したなら、何が伝わるようになったかを確かめます。相談時に繰り返されていた誤解が減ったか、参加条件を読んだ人が正しく説明できるか。人数を測るときは、対象者数も一緒に残します。問い合わせ総数だけでは、関心が増えたのか、説明が分かりにくくなったのかが区別できません。

出願や入学者数は経営上の結果として追います。ただし、説明文を一つ直した効果の証明には、その前後の増減だけでは足りません。入試方式、学費、募集する学部、広告量など、同時に変わった条件も記録します。個々の施策には、担当者が動かした仕事に近い指標を置き、最終結果との関係を観察します。

7.結果を見た後、どの判断へ戻るか

実施前に、振り返る日と、結果を受け取る責任者を決めます。予定日が来たら、継続、修正、停止、判断保留のいずれかを選び、その理由を残します。反応が少なすぎる場合や、集計条件が変わった場合は、効果なしと即断せず、何を追加で確かめるかまで決めます。

伝えたい特徴は理解されたが選択につながらないなら、次は費用や通学条件、他の進路との比較を調べる。特徴の意味が伝わっていないなら、説明と接点を見直す。制度の提供条件と相手の期待がずれているなら、約束の範囲か制度そのものへ戻る。七段階は、初めから順番に一度だけ進む工程ではありません。

次の予算を付ける前に、「今回分かったのは何か」「その結果、大学のどの仕事を変えるか」を一文ずつ残してください。会議で了承された方針が、広報の制作依頼で終わらず、大学としての判断へつながっているかを確かめられます。

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