大学ブランディングの成功事例をどう見極めるか|3大学の公式資料から考える
- 執筆
- 大学ブランディング研究所 編集部
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他大学の発信を見て、同じことを自校でもできないかと考える。そのとき持ち帰りたいのは、目立った表現だけでなく、なぜその大学がその活動を選び、何を実現しようとしているかです。ただし、制度の設計、研究の成果、建学時の構想では、確かめられることが違います。三大学の資料を読み分けてみます。
国際教養大学では、留学先で何を学ぶかまで読む
国際教養大学の開学理念は、豊かな教養と実践的な外国語コミュニケーション能力を大学の名称に込めた考えとして紹介しています。教育目標にも、異なる文化や言語の背景を持つ人と関わり、協働する力を挙げています。
そこで1年間の留学の案内を読むと、期間だけでは見えなかった設計が分かります。学生は語学だけを学ぶのではなく、留学先の専門課程で単位を修得します。出発前にアカデミック・アドバイザーと相談し、関心や将来の希望に応じて履修科目を決めます。
外国語を使えるようになることと、外国語で専門を学び、他者と議論することは違います。留学を卒業に必要な専門の学びに組み込む点に、教養と実践的な意思疎通を結ぶ考えを読み取れます。参考にするなら、「留学1年」という目立つ条件より、留学中に学ぶ内容を自校の教育目的とどうつなぐかが論点になります。
近畿大学の「成功」は、まず研究上の意味を確かめる
クロマグロ完全養殖の公式紹介では、卵から育てた親魚が2002年に産卵し、さらに次の魚を育てた経緯を追えます。人工種苗から親魚を育て、採卵して次の人工種苗へつなぐ。ここでいう成功は、天然の種苗に依存しない養殖の循環を成立させたことです。
近畿大学の教育方針は、実学を直接的な有用性だけに限定せず、現実に立脚して物事の意味を学ぶ考えとして説明しています。完全養殖では、魚を育てる技術を、次の世代の種苗をどう得るかという現実の条件まで含めて成立させています。天然の種苗を採って補う前提そのものを研究で変えた点に、知識を現実の仕組みへ働かせる実学の一面を読み取れます。
この具体を抜いて「ブランドの成功事例」とだけ紹介すると、何に成功したかが曖昧になります。研究でできるようになったことと、その発信による認知や志願者への影響は、別に確かめる問いです。自校でも、理念を説明する根拠として研究を挙げるなら、まず研究自体の目的と到達点を読者に渡す必要があります。
金沢工業大学の綱領は、活動を選ぶ理由を読む資料
金沢工業大学の建学綱領に掲載された1965年の文章は、人間形成を学園の使命の中心に据えています。そのため、教育の場を教室や実験室に限らず、文化活動、寮生活、生活相談、就職支援などへ広げて捉えています。
人を育てるという考えから、学生生活のどこまでを教育の仕事とするかを説明しているのです。この資料から借りられるのは、支援の名称の一覧よりも、支援を教育の一部と考える理由の示し方です。現在の制度の運用を調べる場合は、別途、今の案内や実施資料へ進みます。
自校へ持ち帰る前に、目的との関係を問う
国際教養大学は、留学の中で何を学ぶか。近畿大学は、研究で何が可能になったか。金沢工業大学は、人間形成をどこで担うと考えたか。同じ「事例」でも、資料から得られる答えは異なります。
他大学の制度や表現をそのまま移す前に、自校が大切にする目的に対して、その方法の何が必要なのかを考えます。必要な条件や仕事まで説明できれば、事例は飾りではなく、採用するかどうかを判断する材料になります。
