大学別分析

東京女子大学の『女性の生きる力科目』には、起業と身体運動がある

執筆
大学ブランディング研究所 編集部
最終更新日
東京女子大学の『女性の生きる力科目』には、起業と身体運動がある

●は必修、○は選択。東京女子大学の「女性の生きる力科目」の一覧には、そんな凡例があります。「女性の起業」は○、「女性のウェルネス・身体運動」は●です。同じ科目群にいても、学生に求める履修の仕方は違います。

大学ブランディング研究所 編集部は、この小さな記号を残したまま科目群の説明を読みました。すると、「生きる力」が職業選択だけを指す言葉ではないことが分かります。

「東京女子大学の『女性の生きる力科目』には、起業と身体運動がある」の論点を可視化した編集部イラスト

起業も健康も、一人の人生に起こる

大学の「リベラル・スタディーズ」のページでは、全学共通の学びを「知のかけはし科目」「女性の生きる力科目」「キリスト教学科目」に分けて紹介しています。「女性の生きる力科目」に並ぶのは、女性学・ジェンダー、キャリア形成、女性と社会、起業、憲法、健康科学、スポーツなどです。起業は選択科目で、「女性のウェルネス・身体運動」は必修科目と記されています。

科目名だけを見ると、キャリアの話と健康の話を別々の特色として紹介することもできます。しかし大学は、女性学の知識やジェンダーの視点から社会・文化・歴史を理解すること、自立的な社会参加の基盤を養うこと、生涯の健康や身体運動を学ぶことを、同じ科目群の説明に収めています。ここでいう「生きる力」の射程は、卒業直後の就職に限られていません。

一覧にある科目を学生全員が履修するわけではありません。必修と選択の区別を落として「全員が起業と身体運動を学ぶ」と紹介すると、大学の説明から離れてしまいます。

「高度の教養」は、専門の外側にも置かれている

東京女子大学の建学の精神は、キリスト教の精神を人格形成の基礎とし、リベラルアーツを柱とする女子高等教育です。同じページの教育理念・目的には、女性に高度の教養を授け、専門の学術を教授研究することが記されています。

学びの特色によると、大学は2024年度から2年にわたりリベラルアーツ教育を現代的に展開する改革を行っています。「女性の生きる力科目」については、女性が自立し、主体的な選択をして生きるための知見を養うと説明します。専門分野を超えて社会課題に向き合うことと、生涯の健康を支える知識・身体能力の双方が挙げられています。

編集部は当初、この一覧を特色科目の幅として眺めていました。大学の説明へ戻ると、「女性の生きる力」は選択肢の多さだけを指していません。女性が社会に参加し、人生を選び続けるうえで、社会の仕組みを知ることと自分の心身を扱うことを、どちらも教育の対象にしている。そのように読むほうが、大学が示す科目群の目的に合います。ここで読めるのは公開された教育設計です。個々の科目の設置理由、必修・選択の決定経緯、学生の経験や卒業後の成果までは評価していません。

科目の幅より、選び方の違いが語ること

建学以来のリベラルアーツと女性の高等教育という方針は、現在の全学共通科目の説明にも現れています。ただし、「女性の生きる力科目」の全科目が必修という意味ではありません。広報・教学がこの特色を伝えるなら、起業と身体運動を同じ項目に並べるだけでなく、何を選択に委ね、何を必修にしているかまで示したいところです。大学が実際に示した区別から、科目群の輪郭を読めるからです。

科目群の名前と履修区分を一緒に示すと、進路と生涯の健康を同じ教育対象に置きながら、学生に求める履修は違うことまで伝わります。