大学別分析

信州大学の新学環、現場との関わりは1年次からどう変わるのか

執筆
大学ブランディング研究所 編集部
最終更新日
信州大学の新学環、現場との関わりは1年次からどう変わるのか

信州大学が2027年4月の開設を予定するサステナブル社会協創学環は、3年次にPBL(課題解決型学習)で地域・企業・行政などの現場へ進むと説明しています。ところが、同じ公式サイトの科目例を読むと、現場との接点は1年次から始まっています。

これは年次説明の食い違いというより、現場との関わり方が少しずつ変わる設計として読むことができます。現場を知る、関係を調べる、異なる相手と協働する。三つの段階を科目例から追います。

川辺の現場を観察した学生が、地域の人との調査と対話を経て、異なる人々と試作品を確かめる編集イラスト

1年次は、現場を知る

大学の発表によれば、新学環は学部等連係課程制度を使い、既存8学部との連係で設ける学部相当の組織です。入学定員は31人、学位は学士(学術)、所在地は松本キャンパスとされています。

学環の公式サイトでは、1年次にRBL(関係性型学習)を通して、自分と社会の関係や、自分が大切にしたいことを探るとしています。科目例の「サステナブル政策入門」には、ゲスト講師の講義に加え、現場訪問、リサーチ、フィールドワーク、企画・試作が挙げられています。

この段階での現場は、すぐに課題を解決する場所というより、自分の関心を確かめる材料です。制度や地域の取り組みに触れ、「自分は何を問題だと感じるのか」を持ち帰る。RBLの説明と科目例を重ねると、1年次の現場経験にはそんな役割が見えてきます。

2年次は、地域の関係を調べる

2年次の科目例「エコシステムデザイン」は、農業・エネルギー・観光・福祉・教育などが連動する仕組みを扱います。フィールド調査と地域関係者との対話を通じて、既存資源を再編集し、循環モデルを提案するプロジェクト型授業です。

ここでは、現場の一場面を見るだけでは足りません。自然環境、地域経済、福祉や教育を一つの関係として捉え、誰の資源がどこで結びつくのかを調べる必要があります。編集部は、この関係を読む段階に8学部連係の意味が表れると考えます。異なる専門知は、学生の関心を地域全体の問いへ広げるために使われます。

3年次は、異なる相手と協働する

3年次の科目例「グローバル協創実践」は、多文化環境で国内外の大学・地域・企業と連携するプロジェクトです。年次説明にあるPBLでも、仲間と協働しながら課題発見、企画、実践へ進むとされています。1、2年次にも現場はありますが、3年次には関わる相手と実践の範囲が広がります。

大学が新学環の核に置くのは、地球・自然・社会・人間の関係性を「リ・デザイン(再生・再定義)」し、新しい価値や持続可能な仕組みを再構築・創造するという思想です。現場を一度訪ねて終えるのではなく、見つけた関係を複数の知で捉え、地域内外の相手と組み直す。公開情報の範囲では、年次ごとに変わる現場との関わりが、この思想を学習行為へ移しています。

「志向・思考・試行・至高」という四つの言葉も、マインド、知識、行動、価値創造の順を示します。ただし、これは2027年4月の開設を予定する教育構想の読解です。開設後の授業運営や学修成果を評価したものではありません。設置前の情報を時制で分けて読む方法は、熊本県立大学の新学部認可後の公開面を扱った記事でも検討しました。

大学広報・入試広報・教学がこの学環を伝える際は、「現場で学ぶ」と一括りにせず、1年次は訪問と観察、2年次は調査と対話、3年次は協働プロジェクトと、関わり方の変化を示すと理解しやすくなります。信州大学の新学環で読み手が知りたいのは、現場へ行くかどうかではなく、そこで担う役割が4年間でどう変わるのかです。