大学別分析

龍谷大学の新学部広報を、四つの動詞から読む

執筆
大学ブランディング研究所 編集部
最終更新日
龍谷大学の新学部広報を、四つの動詞から読む

「就任予定」「改修しています」「取り組んだ」「着任予定」。龍谷大学が2026年9月18日に公開した広報誌102号の案内には、2027年4月の新学部開設に関わる四つの動詞が並んでいます。

編集部は当初、環境サステナビリティ学部と情報学部の違いを探して、このページを開きました。しかし、二学部の説明より先に目に残ったのは、同じ「新学部の最新情報」の中に、まだ起きていないこと、いま進んでいること、すでに行われたことが同居している点でした。学部の特徴を比べる前に、なぜ異なる時間の材料を一冊へ集めたのかを考えてみます。

対談、ノートPCを囲む協働、空間整備という異なる場面を並べた編集イラスト

四つの話の前に、キャンパスが向かう先がある

びわ湖大津キャンパス特設サイトは、2027年4月のキャンパス改称と二学部の開設を、大学・企業・自治体・地域が集う共創拠点という一つの物語で見せています。環境サステナビリティ学部の体験・共創型PBL、情報学部の「情報×○○」の学び、既存の理工学部と農学部、施設、地域との関係まで、個別の学部案内より大きな構図です。学部名称と設置計画は予定であり、変更の可能性があることも同じページに記されています。

その方向の根にある考えは、「グリーン・コレクティブ・インパクト構想」に書かれています。龍谷大学は「浄土真宗の精神」を建学の精神とし、「自省利他」を行動哲学として掲げてきました。基本構想400の学長挨拶では、自省利他を、利己的な自己を見つめ、自己中心性を解きほぐしながら、他者の悩みを自分のこととして受け止め、その幸福のために行動すること、と説明しています。

大学だけで完結せず、企業や自治体と環境課題に向き合う。キャンパス全体の物語には、この価値観が通っています。だからこそ、広報誌に対談、企業連携、教員研究、空間整備を一緒に載せる理由も見えてきます。新学部の名称を知らせるだけでなく、人、活動、知、場所がどのように集まり始めているかを見せたいのでしょう。

ただし、全体の方向に筋が通っているからといって、個々の活動まで「自省利他の成果」と呼べるわけではありません。大学自身も、ハッカソンや施設改修をそのように説明してはいません。一つの物語へ集めることと、同じ意味を与えることは別です。

そこで、四つの動詞に戻って読む

最初の「就任予定」は、二人の新学部長予定者による対談です。ここで読めるのは、これから学部を率いる人が語る魅力と展望。未来へ向けた言葉です。

次の「改修しています」は、7号館、2号館3階、6号館の整備です。演習室や実験室を充実させるなど、学びの受け皿をつくっている途中が示されています。これは完成後の教育成果ではなく、準備が実際に進んでいることの証拠です。

三つ目の「取り組んだ」は、龍谷大学・ソフトバンク・平和堂が連携したハッカソン。メンター、着任予定教員、学生が参加し、その関係者による座談会が広報誌に載ると案内されています。四つの中で、唯一、活動がすでに行われたことを示す動詞です。ただし、この一回の活動から、新学部の全学生が経験する授業までを想定することはできません。

最後の「着任予定」は、教員の研究紹介です。そこにあるのは、新学部へ加わる予定の研究者が、いま持っている専門性。個人の研究実績は、新学部で出会える知の方向を想像する助けになりますが、まだ始まっていない学部の教育実績とは別です。

大学広報、入試広報、教学が開設前の原稿を校正するとき、確認したいのは素材の華やかさだけではありません。そこで使われている動詞が、資料で確認できる現在地と合っているか。対談なら「語った」、活動なら「行った」、施設なら「整備している」、教員なら「着任を予定している」。主語と動詞を保てば、読者は期待と事実を取り違えずに済みます。

同じ号に載っていても、四つが証明するものは違います。けれど、違うから一緒に載せられないのではありません。時間の違いを消さずに並べることで、新学部は、完成した一枚の絵ではなく、複数の人と仕事が集まりつつある姿として見えてきます。龍谷大学の広報誌案内が示しているのは、未来を実績らしく語る技術ではなく、未来へ向かう材料を、それぞれの現在地のまま編集する技術です。

設置構想中の情報を部門間で更新する考え方は、久留米大学の文系改編を扱った記事でも整理しています。