立教大学の「全カリ」は、なぜカリキュラムだけではないのか
- 執筆
- 大学ブランディング研究所 編集部
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立教大学の「全カリ」は、科目の愛称ではありません。大学自身が、カリキュラムであり、運営組織であり、教育改革の運動でもあると説明しています。
一つの名称に三つの仕事を持たせた背景には、教養教育を専門教育の外側へ置かないための改革史がありました。大学ブランディング研究所 編集部は、「全学部によって運営」という現在の一文から読み始め、1955年までさかのぼることで、その重さを捉え直しました。

1955年の「部局」から、1997年の「全学で支える」へ
全学共通科目の概要によると、立教大学は1955年に一般教育部を設置し、翌年には独立した教授会を持つ部局としました。私立大学の中でも早くから教養教育を重視した形です。
一方、その後の課題として公式ページが挙げるのは、一般教育が学士課程へ有機的に融合していないこと、外国語教育が学生や社会の要請に応えきれていないこと、組織の硬直でカリキュラムが固定化していることでした。教養教育を担う専門部局を置いたことと、専門教育との距離ができたことが、同じ歴史の中に書かれています。
1991年の大学設置基準の大綱化を機に再編へ進み、「全カリ」を創出し、1997年度から全面展開しました。ここで掲げたのが「全学で支える」という理念です。2016年度には学士課程統合カリキュラムと連動する「全学共通科目」へ改編し、公式ページがいう3rdステージに入りました。
この流れを追うと、「全学」は単に受講対象が広いという意味ではありません。大学が改革の際に変えたのは、教育目標の置き方でもありました。教養を備えた専門人を育てるという考えから、専門性を持つ教養人を育てるという考えへ。その目標のもとで、一般教育部の蓄積を引き継ぎ、全学で運営責任を負う体制をつくっています。教養と専門を結びつける役割を、各学部も担うということです。
科目表だけでなく、運営表まで公開する
現在の全カリ運営センターは、全学共通科目の立案と運営に全面的な責任を負い、全学部の教員の参画を基本としています。全カリ委員会には各学部長、外国語教育研究センター長、教務部長らが入り、言語系と総合系のチーム、教務委員会、サポートグループ、専属の事務部局がそれぞれ役割を持ちます。
さらに、すべての専任教員は担当ルールに従って全学共通科目を担い、所属学部の教員であると同時に、全カリ運営センターの教員として、すべての学生への教育責任を負うとされています。「全学部によって運営」という短い表現の後ろに、会議体、担当ルール、事務体制まで置かれていました。
科目を全学へ開けば、それだけで全学的な教育になるわけではありません。誰が企画し、誰が担当し、誰が改訂を決めるのか。立教大学の公開情報は、履修できる範囲と、運営責任の範囲を別々に示しています。
カリキュラムを「運動」と呼ぶ理由
三つ目の役割は、教育改革の運動です。公式ページは、全カリを固定した完成品ではなく、毎年、そして大きくは4年間のサイクルで点検・改定する仕組みとして説明します。教育研究室やチームが教材・教育方法を研究し、担当者連絡会やワークショップを開き、学生による授業評価も改善に活用するとしています。
一般教育部で起きたと記される固定化の課題に対し、センター化と定期改定を組み合わせた。大学はこの仕組みを、社会の要請と学生のニーズに応えながら、カリキュラムの形骸化を避けるものと説明しています。運営主体を決めて終わらず、教える内容を更新し続けるために「運動」という言葉を使っているのです。
建学以来のリベラルアーツを、制度の形にする
立教大学は1874年の創立以来、リベラルアーツを教育理念に掲げてきたと説明しています。現在の教育研究上の目的と各種方針では、建学の精神「Pro Deo et Patria」に基づき、真理を探求し、世界・社会・隣人のために働く「専門性に立つ教養人」を育てるとしています。
公式の概要では、教養教育と専門教育が相互に関わりを持つために、「専門性に立つ教養人」を目指すと説明されています。専門科目と全学共通科目を並行して学び、各学部の教員が共通科目にも責任を持つ。この学生側と教員側の両方の仕組みが、教養と専門を結びつけるという教育観に対応しています。教学や広報が「全学的」という言葉を使うなら、対象学生の広さだけでなく、運営主体と改定責任まで説明できるか。立教大学の公開面から持ち帰れる判断はそこです。
