東京農業大学の実学主義を、榎本武揚と横井時敬から読む
- 執筆
- 大学ブランディング研究所 編集部
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「稲のことは稲に聞け、農業のことは農民に聞け」。東京農業大学が紹介する初代学長・横井時敬の言葉です。実学主義の説明が、学びに向かう先をこれほど具体的に示しています。「実学主義」のもと「生きる力」を育む
大学の歴史には、創設者の榎本武揚も登場します。二人の言葉を読むと、実学が「仕事に役立つ知識」というだけではないことが分かります。誰のために学校をつくり、何を学びの拠り所にするのか。現在の体験型カリキュラムにも続く問いです。
学校をつくった理由を語る人
大学は、榎本武揚が諸外国の産業を視察し、日本が国際社会で競争できる力を持つには、安定した農業生産力の発展が欠かせないと考えた、と説明しています。1891年に創設した育英黌農業科は、近代農業の技術を国内各地へ広めるリーダーの育成を目標に掲げました。建学の祖 榎本武揚は、その歩みを「科学する心」と「冒険心」という言葉とともに紹介します。
榎本の人物史を読むと、どのような社会の必要から学校が生まれたのかを知ることができます。創設者の名は、歴史の始点を示すだけでなく、学校をつくる理由を伝えています。
学び方を言葉にした人
横井時敬については、大学は徹底した実学主義によって学風と農大生気質の基礎を築いたと説明しています。「農学栄えて農業亡ぶ」という言葉も紹介しています。実学主義の説明
学問が発展することと、現実の農業がよくなることを、同じものとして扱わない言葉です。稲と農民へ聞くという呼びかけも、研究室の外へ学びの相手を求めています。
実学主義を職業に役立つ教育とまとめると、この対象との関わりが抜け落ちます。大学ブランディング研究所 編集部は、横井の言葉に、役立つかどうかの判断を現場へ返す姿勢を読み取ります。
現在公開されている体験型カリキュラムの説明は、実学主義を、現場に繰り返し通い、働く人の声を聞いて課題を捉える教育としています。講義の知識を学内外の体験型授業で検証するという説明もあります。単に教室の外へ出ることを勧めているのではありません。
この説明なら、「稲に聞く」「農民に聞く」は学ぶ順序に関わる言葉になります。先に知った理論だけで現場を説明し切らず、実物や働く人に接して、何が課題なのかを確かめ直す。学長メッセージにもあるフィールド科学の重視を、体験を増やすこと以上の学問の姿勢として読めます。
榎本から読めるのは、農業の技術を各地へ広める人を育てるという社会の必要です。横井から読めるのは、学問を現実の農業へ問い返す方法です。東京農業大学が現在のカリキュラムでも現場との往復を説明するのは、この二つを切り離さずに読む手がかりになります。学ぶ人を育て、その人が関わる現場へ知を返す。実学主義は、教わった知識を持って行くだけでなく、現場から学び続ける教育観なのです。
