駒澤大学の「繋がり」は、五つの改革で何をしているのか
- 執筆
- 大学ブランディング研究所 編集部
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「自他協創」は、学校法人駒澤大学が長期ビジョン「駒澤2030」で掲げた造語です。
「自他」は、建学の理念に基づく自利と利他。「協創」は、人と人をつなぐネットワークから新しい発想を生み出す力。法人は二つを一語に結び、その直後に「繋がり」を置いています。なぜ、この言葉を繰り返すのか。答えは、同じページに明記されていました。

法人のビジョンが、「繋がり」を定義している
駒澤2030は、「繋がり」を法人の環境特性と、過去から未来へ継続する人材育成を表す言葉だと定義しています。雰囲気を添える標語ではなく、駒澤大学、高校、卒業生、地域や社会を含む法人の条件と、時間を越えて続く教育の二つを担わせています。
大学ブランディング研究所 編集部は当初、本文で何度も現れる「繋がり」を、ビジョンの統一感を出す反復として読みました。ところが、五つの改革大方針へ進むと、同じ語の相手と仕事が毎回変わります。同じ言葉を、どんな教育や研究の仕事へ置き換えているのでしょうか。
四つの改革では、必ず相手が現れる
第一の改革は、大学と二つの高校を含む法人全体の繋がりをつくり、高大連携を深めること。第二は、多様な学問や人々との繋がりを、入学前から卒業後までの教育へ通すこと。第三は、禅を中心にした新しい知の枠組みを世界へ発信し、国際化と多様化へつなげること。第四は、産業界、官庁、地域社会と教育・研究資源をやり取りし、社会課題の解決へ向かうことです。
ここで「繋がり」は、仲の良さを示す言葉ではありません。高大連携では教育段階をまたぐ。学修支援では入学前と卒業後をまたぐ。研究では大学内と世界をまたぐ。社会連携では大学の成果と外部の資源を往復させる。何と何の境界を越えるのかが、改革ごとに書き分けられています。
一方、第五の「経営基盤の強化」では、「繋がり」という語を前面に出していません。扱うのは法人全体のガバナンス、組織体制、意思決定プロセス、改革を実行する経営基盤です。最初の四つには、高校との教育上の連携、卒業後までの学び、研究の発信、社会への還元という仕事が並びます。第五は、それらを進めるために誰がどう決めるかを整える方針です。
「自他」は、理念のどこから来たのか
建学の理念は、仏教の中核である「縁起」を、すべてのものは何らかの条件に依存し、単独では存在しえないという考え方として説明します。そこから、物事を理解する智慧は他者への慈悲へ展開すべきだと続きます。
「信誠敬愛」の「敬」は自他の尊厳を意識して尊重すること、「愛」は自己の学びを周囲へ還元すること。「行学一如」は、自らを高める学びと、それを社会に生かす実践が一体であることを意味するとされています。
この説明を踏まえると、「自他協創」の自他と、ビジョンで繰り返す繋がりは別々ではありません。自分だけで完結せず、学びを他者と社会へ返すという価値を、2030年までの改革相手へ置き直しています。第一の方針では、大学だけでなく高校でも人類・世界に貢献する精神を育む。第四では、教育研究の成果を社会へ返し、学外からも資源を受け取る。「自利・利他」を、育てる時期や社会との関係にまで書き下ろしているところに、編集部はこのビジョンの具体性を読みます。
「繋がり」を使うなら、相手と仕事を書く
経営計画や大学広報では、「地域との繋がり」「社会との繋がり」と書きやすい反面、何をする関係なのかが消えがちです。駒澤2030では、高校との連携では貢献する精神を早期から育むこと、学問や人との関わりでは生涯学修、世界への働きかけでは知の発信、産官地域との連携では課題解決というように、相手の後ろへ仕事を置いています。
同じ「繋がり」を繰り返すのは、同じ仕事を五つに分けるためではありません。第一の方針は、高校から大学へと教育段階をまたいで貢献する精神を育むこと。第四は、学んだことや研究成果を社会へ返し、学外の資源も受け取ること。そして第五で、それらを進める法人の意思決定を整える。自ら学ぶことと他者へ返すことを一体とする理念が、相手の異なる仕事に書き分けられているのです。
