大学別分析

近畿大学の「実学」は、学生の昼食にもなる

執筆
大学ブランディング研究所 編集部
最終更新日
近畿大学の「実学」は、学生の昼食にもなる

近畿大学は、学生に近大マグロを食べてもらう日を設けています。2024年の案内には、マグロ丼や握り寿司のセットを学内で特別販売し、建学の精神や研究成果に触れる機会にする、とあります。「近大マグロの日」ニュースリリース

研究成果が学生の昼食になることは、建学の精神「実学教育と人格の陶冶」の、何を伝えるのでしょうか。大学自身が近大マグロを実学の証と位置づける理由と、学生が食べる機会を設ける理由を、分けて確かめます。

32年かけた研究が、大学を説明する材料になる

近畿大学水産研究所は、2002年にクロマグロの完全養殖に成功しました。卵から育てた親魚が産卵し、次の世代を育てる循環の実現に、32年を要しています。クロマグロ完全養殖の成功

大学の建学の精神は「実学教育と人格の陶冶」です。建学の精神・教育の目的は、教育を通じて人を育てる考えを示しています。

大学自身が「近大マグロの日」の発表で、完全養殖の成果を実学教育の証と位置づけています。卵から親魚、さらに次の世代へとつなぐ研究が、食べられる魚として大学の外でも扱える段階に至った成果です。大学ブランディング研究所 編集部は、知識の発見にとどまらず、暮らしに使えるものへ育てた点から、この実学の説明を読みます。

食べる機会を、学内の理解へ

大学の発表によると、学生への特別販売は2013年から行われています。研究成果に触れ、自校理解へ役立てることを目的に、低価格で提供する取り組みです。2024年の実施案内

完全養殖の過程を全員が専門的に学ぶわけではありません。それでも学生が食べる場には、この魚はどのような研究から生まれたのかを考える入口をつくれます。実学を「役立つ学び」と定義するだけでは見えない、研究から食へという距離を、自分の昼食に引き寄せる機会です。

広告と計画では、違う使い方をする

2015年の「マグロ大学って言うてるヤツ、誰や?」という広告でも、大学はクロマグロ完全養殖を実学教育が形になった例として説明しました。広告のニュースリリース

同じ成果でも、広告では大学を知る入口になり、学内の食堂では自分の大学の研究を知る機会になります。近大マグロを一度の話題として使い切らず、相手に合わせた接点を持たせています。

さらに長期ビジョン2030は、革新性、社会に役立つこと、期待され応援されることを行動指針として掲げています。マグロそのものを全学の活動へ広げるというより、社会に成果を返す姿勢を将来の方向として説明しています。

成果を持つことと、伝える仕事

近大マグロが食堂にあることと、食べた学生が実学を理解することは別です。だからこそ大学は、特別販売を研究成果と建学の精神に触れる機会として説明しています。料理を提供するだけでなく、何を食べているのかを大学の研究へ結びつけて知らせる仕事があります。

近畿大学の実学は、遠くで起きた研究成果としてだけ語られていません。長年の研究で生まれたものを学生が口にする。その際に、大学は完全養殖の研究成果であることを知らせています。研究成果の説明と食べる機会を学内で組み合わせることが、「近大マグロの日」が実学を伝える意味です。