大学別分析

大学名は広く、学びの名前は具体的に――新潟薬科大学の改称計画を読む

執筆
大学ブランディング研究所 編集部
最終更新日
大学名は広く、学びの名前は具体的に――新潟薬科大学の改称計画を読む

大学名を見た人は、その大学で何を学べると思うでしょうか。「新潟薬科大学」なら、まず薬学を思い浮かべるはずです。ところが同大は、2027年4月に「新潟科学大学」へ名称を変更する予定です。その時点では薬学だけでなく、食・農、医療技術、看護、AI・データまでを含む4学部7学科の体制が示されています。

名称変更を、単に「薬学の大学という印象を広げるため」と読むだけでは見落とすことがあります。大学名は広い言葉へ変わる一方、学部・学科名には、むしろ学びの対象を具体的に伝えようとする変更が見えるからです。

「薬科」では、現在の学びを包みきれなくなった

新潟薬科大学が2024年12月に公表した名称変更計画では、薬学から始まった教育・研究領域が、農学、医療、社会科学へ広がってきたことを改称理由に挙げています。新しい「科学」という名称には、分野を横断して社会課題に向き合う総合大学を目指す考えが込められています。

この説明から確認できるのは、現在の「薬科」という名称と、大学が示す教育領域の広がりにずれが生じているという自己認識です。名称変更によって認知や志願がどう変わるかは、まだ公表資料からは分かりません。ここでは、大学が何を成果として得たかではなく、どの範囲を一つの大学名で表そうとしているかを見ます。

その範囲は、単に分野を増やす話でもありません。改称計画の決定文では、大学は新しい名称の理由を「科学を駆使して社会や地域への貢献を図り、末永い発展を目指していく」ことだと説明しています。リブランディング特設サイトも、建学の精神である「実学一体」を継承すると掲げます。大学名を広げる判断は、薬学以外を付け足すためというより、実学を通じて地域や社会へ関わる対象を、複数の専門領域へ開く構想として示されているのです。

大学名は広く、学部・学科名は具体的にする

編集部も当初は、名称を全体に広い言葉へ置き換える改称だと考えました。ところが新旧の名称を並べると、すべてが抽象的になるわけではありません。「応用生命科学部」は「食農情報学部」へ、「応用生命科学科」は「食品生物化学科」へ、「生命産業ビジネス学科」は「食農ビジネス学科」へ変更する予定です。大学は、社会から教育・研究内容を理解してもらいやすい名称にするためだと説明しています。

大学全体の看板は、複数の領域を受け止められる「科学」へ広げる。その下では、「食」「農」「情報」「生物化学」「ビジネス」と、何を学ぶのかが想像できる言葉を置く。大学自身が名称体系の役割分担まで明示しているわけではありません。ただ、実学を通じた社会・地域への貢献という説明と、新旧の名称を並べて読むと、上位の名称で対象の広がりを示し、下位の名称で学びの手がかりを具体化する設計だと、大学ブランディング研究所 編集部は解釈しました。

「大学名は広く、学びの名前は具体的に――新潟薬科大学の改称計画を読む」の論点を可視化した編集部イラスト

新しい領域も、大学名の中に置かれている

2026年8月の大学発表によると、2027年度に向けて、グリーン・デジタル学科と救急救命学科の設置届出が受理され、関連する収容定員の変更も認可されました。グリーン・デジタル学科の案内では、食・農・環境とAI・データサイエンスを組み合わせる学びが説明されています。

「科学」という大学名は、既存領域を言い換えるだけでなく、こうした新しい組み合わせを同じ大学の中に置く器にもなっています。ただし、名称が新領域の理解をどこまで助けるかは、今後の案内や受け手の反応を見なければ判断できません。

改称で問われるのは、広げる言葉と説明する言葉の分担です

新潟薬科大学の公開資料を読む限り、改称で確定しているのは2027年4月の名称・組織の変更予定と、その理由として示された教育研究領域の広がりです。認知や志願にどう届くかは、まだ判断できません。それでも、大学広報・経営企画・入試広報が改称を説明するとき、候補名の印象だけで資料を組み立てるのでは足りません。大学名がどの将来像を包み、学部・学科名がどの学びを具体的に説明するのか。少なくともその二つを別々に示せているかを、公開前に確認する必要があります。

「実学一体」を継承し、社会や地域への貢献を掲げるという大学自身の説明は、この名称の分担を読む手がかりになります。上の名前は広げ、下の名前は具体化する。改称を一語の選び直しで終わらせず、大学全体と個々の学びをどうつないで伝えるかという設計として見ると、検討すべき問いが見えやすくなります。